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新薬モニター 新型コロナウイルスワクチン「コミナティ」

 新型コロナウイルスワクチンは、世界各国で接種がすすみ、日本でも接種を開始しました。開発から1年もたっていないワクチンですから、情報が少なく、効果も危険性も明確になっていません。
 ファイザー製の「コミナティ」の有効性は約95%と公表されていますが、この数字の解釈は複雑で、100人接種したら95人が発症を予防できるということではありません。海外の4万3651人に行った臨床試験で、2回目の接種から7日以降に発症した人数は、ワクチン30μg接種群1万9965人中9人、プラセボ群2万172人中169人という結果から導き出された数字で、発症者の割合を約95%減らすことができたことを意味しています。同時に、接種をしなくても、感染しなかった人も含め99.2%は発症しなかったことも導き出されます。流行していないときには、発症者はいないわけですからこの数字は変わってきます。
 本当に効果があるかどうかは、発症を防ぐことではなく、ワクチンの影響も含め死亡や重篤な後遺症を減らしたかどうか、という最終結果で判断します。接種率の高いイスラエルの保健省の発表では、2回目の接種から2週間後には、死亡に至ることを防ぐ効果は98.9%、重症化を防ぐ効果は
99.2%という結果でした。この数字は信頼できますが、問題は、日本人での結果ではない、ということです。
 一方、害反応はどうでしょうか。重篤な副反応はアナフィラキシーショックが懸念されており、VAERS(米国ワクチン有害事象報告システム)に集積された2021年1月18日時点のデータで、ファイザー製は1700万回接種で47人、モデルナ製は758万回接種で19人に発現しています。しかし、この情報だけでは1回目と2回目の差がわかりません。1回目でワクチンを異物と認識すれば、2回目でアレルギー反応が起きる確率は格段に高くなります。2回目の接種におけるアナフィラキシーへの注意がより厳重である必要性が高い、ということがうかがえますが、このような注意喚起は日本では周知されていない印象です。
 害についての評価は、ヒトでは確かめることができないため、動物実験や、その前段階の細胞レベルでの結果も重宝します。懸念の一つに、抗体依存性免疫増強(ADE)と呼ばれる現象があります。ワクチン接種後にコロナウイルスに感染すると、より重篤な状態に陥る副反応です。2003年のSARS(これもコロナウイルス)の時にワクチン開発が行われましたが、ADEが起き、中止に追い込まれました。ノルウェーでは高齢者施設で約4万2000人にコロナウイルスワクチンを投与し29人が接種後に死亡、13人が生命の危機にさらされたと報告がありましたが、ADEの可能性も考慮する必要があるでしょう。
 ワクチンは健康なヒトに接種するので、安全性は十分に担保されなければなりません。ひきつづき監視が必要です。
 最後の課題として、新型コロナウイルス感染が収束して以降、ワクチンの定期接種がすすめられる時のことも考えなければいけません。前述のように、流行していないときの接種の結果は、流行しているときとは違う結果になるからです。どのような結果が出るのか、注目です。

(民医連新聞 第1734号 2021年4月5日)