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くすりの話

くすりの話

くすりの話 錠剤嚥下障害

執筆/石井 亮(愛媛・新居浜協立病院薬剤科、薬剤師)
監修/野口 陽一(全日本民医連薬剤委員会、薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた質問に
 薬剤師がお答えします。
 今回は錠剤嚥下障害についてです。

 「錠剤嚥下障害」とは、加齢や病気などによって薬を飲み込む機能が低下して、本来は胃腸に運ばれるべき薬が口やのど、食道に留まってしまうことです。錠剤が留まった部分に潰瘍ができたり、薬の効き目に悪影響を与えることがあります。
 沢井製薬が昨年、50~70代の男女2000人を対象に行った調査によると、3割の方が薬やサプリメントに飲みにくさを感じていることが分かりました。ところが医師に相談した人は1.6%、薬剤師に相談した人は0.4%と、専門家に頼る割合は極端に少ない実態も明らかになりました。
 飲み込みにくさの対処法としては「水を多く飲む」(48.3%)が多数派でしたが、錠剤を砕いたり、カプセルから出して服用する方も少なからずいました。しかし、みなさんに知っておいていただきたいのは、錠剤はただ有効成分を固めただけのものではないということです。薬が効く速さや時間などを緻密に計算して作られています。
 薬の成分がゆっくり溶け出すように加工された「徐放錠」の場合、粉砕すると短時間に過剰に薬の効果が出てしまい危険です。また、表面に苦みを感じにくくする工夫を施した薬の場合、粉砕すると苦みがひどくなり、服用できなくなったという話もよく聞きます。
 薬を飲み込みにくい場合は、安易に粉砕したりせず、必ず医師や薬剤師に相談してください。とろみをつけた水や服薬補助ゼリー、錠剤をオブラートで包んでゼリー状にする「水オブラート法」など、さまざまな対策や工夫が可能です。近年問題になっているポリファーマシー(薬を多く処方されている状態)を点検し、錠剤嚥下障害のリスクを下げるのも重要です。
 最後に、5つの質問で錠剤嚥下障害を判定するアセスメントツール「PILL-5」を紹介します。合計が6点以上で嚥下を補助する製品の使用が推奨され、12点以上の場合は薬の剤形変更が推奨されています。心配な方はご遠慮なく、医師や薬剤師にご相談ください。

 

PILL-5

参考:「ニュートリー株式会社」ホームページ

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2024.9 No.394