くすりの話 プロテインとは?
執筆/藤竿 伊知郎(外苑企画商事、薬剤師)
監修/金田 早苗(全日本民医連薬剤委員会、薬剤師)
読者のみなさんから寄せられた質問に薬剤師がお答えします。
今回の質問はプロテインについてです。
プロテイン食品がブームとなり、スーパーやコンビニにはコーナーができています。運動した後のプロテイン摂取で筋肉をつけ、基礎代謝のアップと消費カロリー増で痩せると宣伝しており、食べるだけで痩せるわけではありません。一方、手軽に入手できるようになったことで、高齢者の食事補助には役立ちます。
プロテインとはたんぱく質のことで、脂質・糖質と並ぶ3大栄養素です。かつて主流だった粉末プロテインは味が悪く飲みづらかったため、筋肉を消耗する運動競技の選手やボディービルダーが飲用するだけでした。現在は大豆を原料とした粉末サプリよりも味の良い、牛乳由来のホエイ(乳清)やカゼインを原料とする製品が増え、消費拡大につながっています。
たんぱく質が不足?
人体の6割を占める水に次いで多い成分がたんぱく質で、体重の15%程度を占めます。たんぱく質は20種類のアミノ酸で構成され、そのうち9種類は体内で作ることができず、食事から補わなければいけない必須アミノ酸です。
厚労省「日本人の食事摂取基準」(2020年版)によると、たんぱく質の摂取基準について、高齢者では男性1日60g、女性1日50gとなっています。1食あたり約20gの計算です。
ここ10年ほど、特に高齢者のフレイル(心身の機能の衰え)を防止するため、筋トレなどの運動とともに、十分なたんぱく質の摂取が推奨されています。栄養不足によって、筋力低下や脳梗塞、認知症になりやすいなどの影響が分かってきたからです。
ところが厚労省が進めてきたメタボ対策によって、「(脂肪の多い)肉は体に悪い」と信じてきた高齢者が肉を敬遠し、たんぱく質が不足するようになっています。肉以外でたんぱく質を取ろうとしても、魚の消費も減っており、少ない種類の食材だけで摂取基準を満たすのは難しいものです。
例えば200gの豚肉はたんぱく質45gですが、絹ごし豆腐半丁(140g)や納豆1パックでは7g。卵1個や牛乳200mlでも7gです。
食が細くなった高齢者が食事を充実するためには、早足での散歩や階段昇降などの運動で食欲が増すように努めるとともに、プロテインを活用するのも一つの手かもしれません。かまぼこや魚肉ソーセージなどの伝統食材も、たんぱく質を補うのに有効です。
いつでも元気 2024.1 No.386