くすりの話 薬の値段
執筆/中西 剛明(石川・金沢医療事業協同組合・薬剤師)
監修/金田 早苗(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)
読者のみなさんから寄せられた質問に薬剤師がお答えします。
今回の質問は薬の値段についてです。
薬の値段の不透明さを冷やかした「薬九層倍」(9倍)という言葉があるように、昔から薬の値段への関心は高いですね。市販薬の値段は自由に決められますが、保険医療に使用できる医薬品の値段(薬価)については、国が価格を決めて「薬価基準」に収載します。
新薬の場合
新薬の場合、薬価の決め方には大きく分けて二通りの方法があります。
ひとつは「類似薬効比較方式」といって、似た効果をもつ医薬品の薬価を基準に決める方法です。高い新規性や有用性が認められる場合には、補正加算が上乗せされます。
もうひとつの方法は「原価計算方式」といって、薬の販売開始までにかかった費用をもとに決める方法です。原材料費や研究開発費、流通経費や宣伝費などを積み上げ、そこに製薬企業の利益を加えます。さらに、諸外国と大きな価格差が生じないように調整します。
厚生労働省が作成した算定原案をもとに、有識者からなる「薬価算定組織」が審議。厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)で了承されると、薬価基準に収載されます。
ジェネリック医薬品の場合
ジェネリック医薬品とは新薬の特許期間が過ぎて、他の製薬企業も製造できるようになった医薬品のことです。新薬に比べて、研究開発費などを抑えられるメリットがあります。
初めて薬価基準に収載されるジェネリック医薬品の薬価は、先発医薬品の40~50%と決められています。銘柄によって違いはありますが、ほとんどのジェネリック医薬品は、毎年の薬価改定で市場価格に合わせて薬価が引き下げられます。
日本の薬価の問題
日本の薬価の問題として、新薬の薬価を決めるプロセスの不透明さが指摘されています。「薬価算定組織」の審議は非公開で、補正加算の根拠もあいまいです。
日本の新薬の薬価は欧州諸国の1.5~2倍となっており、薬剤費に占める新薬の割合(金額シェア)は56%という試算があります。また、一部の新薬は薬価改定で薬価が下がらない仕組みもあります。
薬価を決めるプロセスの透明性を確保して、薬価を適正に引き下げる必要があると思います。
いつでも元気 2023.9 No.382