くすりの話 薬用植物
執筆/藤竿 伊知郎(外苑企画商事・薬剤師)
監修/金田 早苗(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)
読者のみなさんから寄せられた質問に薬剤師がお答えします。
今回の質問は薬用植物についてです。
植物学者の牧野富太郎をモデルにしたテレビドラマから、ドクダミなど薬用植物に興味が湧いた方もおられるかもしれません。ドクダミは、ゲンノショウコ、センブリとともに日本の三大民間薬として古くから使われてきました。またドクダミ茶など、健康食品としても広く販売されています。
薬用植物は、品種・産地・利用部位・採取時期によりその薬効に違いがあります。明治以来の近代薬学では、利用できる条件を絞り込み、「生薬」として公定文書「日本薬局方」に掲載し、その効果を特定してきました。さらに有効成分を分離して取り出し、天然物由来の不安定さをなくすように努めてきました。
しかし、薬用植物は多数の活性成分を含んでおり、その効果を一部の成分だけで説明できません。下剤として用いられる大黄は、大腸の動きを活発化させるセンノシドなどだけでなく、反対の作用を持つタンニン化合物を含み、そのバランスを考慮しながら薬として利用します。
さらに、多様な成分を含む漢方エキス製剤について、国は品質基準を1985年に作成し、薬効を保証しました。
薬用植物の健康食品
薬用植物を使った健康食品の分野では、品質のばらつきがさらに甚だしくなります。2002年11月、国民生活センターは報道発表資料「イチョウ葉食品の安全性」を公開しました。健康被害が多発していたイチョウ葉食品について、20銘柄を購入してアレルギー物質のギンコール酸を測定するとともに、その他の特有成分量や表示について調べたものです。
薬効があるとされる成分について、「葉の抽出物」を使用した銘柄では7銘柄で比較的多く摂取できるが、摂取量が極端に少ないものや、(ドイツの)医薬品の目安量より少量しか摂取できないものが3銘柄あったと報告しています。
国民生活センターは当時、統一規格の作成や商品の品質向上を要望しましたが、今でも自主基準さえない状況が続いています。公的機関によるレベルの高い買い取り試験は、このあと行われていません。
2016年9月、消費者庁は日本サプリメントが販売する「ペプチド茶」「食煎茶」など6商品の特定保健用食品(トクホ)表示許可を初めて取り消しました。表示の100分の1程度しか有効成分が含まれておらず、判明したあと2年以上も報告せずに販売を続けていた悪質なケースです。
消費者に信頼してもらえるよう、公的機関はより積極的に健康食品の販売実態を調べ、改善策をとってほしいと考えます。
いつでも元気 2023.8 No.381