くすりの話 医薬分業
執筆/荒神 葵(広島・ひまわり薬局佐伯店・薬剤師)
監修/金田 早苗(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)
読者のみなさんから寄せられた薬の質問に薬剤師がお答えします。
今回は医薬分業についてです。
以前は医療機関で医師の診察を受けて、そこの窓口で薬を受け取ることが普通に行われていました。現在は医療機関で院外処方せんをもらい、保険薬局で薬を受け取る「医薬分業」の仕組みが定着しています。
医薬分業の目的は、医師と薬剤師がそれぞれの専門性を発揮して二重に確認することで、患者さんの安全を守ることです。厚労省の統計によると、2021年の院外処方率は78.3%と、8割近くに上ります。
院外処方せんには薬の名前と用量、使い方の指示が書かれています。薬剤師は「用量に間違いがないか」「飲み合わせの悪い薬はないか」などを確認して調剤します。
患者さんに薬をお渡しする際に、薬剤師は正しい服用の仕方や副作用、注意すべき飲み合わせや食べ合わせについて説明する義務があります。薬をお渡ししたあとも、その効果や副作用の有無を聞き取るなど、継続的にフォローアップすることになっています。
医薬分業のメリット
患者さんから見た医薬分業のメリットには、どんなことがあるでしょうか。
まず、病院で薬ができるのを待つ必要がなく、都合のいい時間帯に保険薬局で薬を受け取ることができます。また「お薬手帳」などを持参して、アレルギーや他の薬との飲み合わせをチェックしてもらうことも可能です。薬に関する疑問があれば、納得いくまで薬剤師に相談できるのもメリットです。
患者さんの中には、医療機関から薬局へ移動して料金を支払うのは「二度手間」だと感じる方もいるかもしれません。でも、以上のようなメリットや薬剤師の役割を理解していただけると幸いです。
医薬分業の流れに乗って増えた保険薬局は、今やコンビニの数を上回っています。保険薬局が生き残るには、他との「差別化」が求められているとも言われます。
これまでは「病院や診療所に近い」という立地や便利さで、保険薬局を選んだ方が多かったと思います。今後は患者さんに選んで来てもらえるような「かかりつけ薬局」に変わっていく必要性を感じています。薬だけでなく健康管理や在宅医療、介護についてなど、地域のみなさんに何でも気軽に相談していただける薬局を目指していきます。
いつでも元気 2023.4 No.377