くすりの話
健康食品の広告
執筆/藤竿 伊知郎(外苑企画商事・薬剤師)
監修/金田 早苗(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)
読者のみなさんから寄せられた薬の質問に薬剤師がお答えします。
今回は健康食品の広告についてです。
健康食品の広告には魅力的な言葉が輝いています。「脂っこい料理 甘~いスイーツ 食べ過ぎてもなかったことに」「約3カ月でマイナス12.7㎏」「コロナに負けない抗酸化作用で免疫アップ」…。
これらは消費者庁が「誇大広告」と判断したものですが、インターネットには同じような表現があふれています。〝使用者個人の感想〟と断りながら「ズボラな私がこんなに変われました」と感情へ訴えかけてきます。
電通が発表した2021年の広告費は、前年比10.4%増の6兆7998億円で、コロナ前の水準に回復しました。中でもインターネット広告費は「新聞・雑誌・ラジオ・テレビ」4媒体の合計を初めて上回り、主役の交代を印象づけました。
◇「アフィリエイト広告」の問題
1月28日、消費者庁の検討会は「アフィリエイト広告」に対する広告主の責任を明確にする報告書をまとめました。アフィリエイトとは提携すること。アフィリエイターと呼ばれる個人や法人(第三者)がインターネットに広告記事を出し、注文につながるとその者へ成功報酬が入る仕組みです。
アフィリエイターは報酬目当てに、大きな効果があったかのように体験談記事を掲載します。アフィリエイターが不当な広告表示をしても、広告主は責任を免れてきました。
ところが2020年7月、大阪府警は広告代理店と広告主(健康食品販売会社)の社員らを薬機法※違反容疑で逮捕。問題になったのは「ズタボロだった肝臓が半年で復活…?!お酒も食事も我慢しなくてOKな方法がスゴすぎる!」とする健康食品のインターネット広告。記事風の体験談は架空で、医薬品ではないのに効果や効能を宣伝していました。このような悪質な事例が、消費者庁の行動を促したとも言えます。
◇情報の大もとは?
インターネットには、健康食品の情報があふれています。しかし情報の大もとは、健康食品を製造・販売している企業がスポンサーとなって実施された研究がほとんどです。そのため、インターネットで見つかる記事は販売側の主張に染まり、ユーザーの口コミレビューも操作されている状況です。
112年前に米ぬかからビタミンB1を発見したように、食品から新しい物質を発見することには夢があります。一方で健康に対する食品の効用は、ゆっくり次第に現れるものです。
平安時代に薬として中国から導入された緑茶は、1000年の時を経て、疲労感・眠気への対策やリラックス作用をもつ嗜好品として生活の中に定着しています。健康食品は広告の言葉に引き込まれず、生活の潤いとして利用するのが良いのではないでしょうか。
※薬機法…旧・薬事法。正式名は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
いつでも元気 2022.6 No.367