くすりの話
情報の信頼性
執筆/藤竿 伊知郎(外苑企画商事・薬剤師)
監修/高田 満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)
読者のみなさんから寄せられた薬の質問に、薬剤師がお答えします。
今回は情報の信頼性についてです。
私たちは今、サプリメントの情報洪水に溺れそうになっています。高齢者にはテレビCM、若者にはスマホに表示される広告で、「ズボラな私がこんなに変われました」と表示する商品が紹介されています。昔の生野菜ジュースや手作りヨーグルトブームでは手間がかかっていた健康食品が、青汁や乳酸菌のサプリメントとなり、いつでも・どこでも・手軽に利用できる時代になったとあおられています。
「面倒な生活改善をしなくても健康な体を得られる」「病気にならないように不足する栄養をサプリメントで補う」「老化による体の機能低下を遅らせることができる」などという、夢のような話が紹介されています。一方で、体の不調や容姿の美醜について消費者の不安をあおり、購入への動機づけを図っています。
多くの人は試して効果を感じなかったら、そのうち買わなくなって終わりですが、不安感にとらわれて次々とサプリメントを買い続けたり、知人に勧める困った方も絶えません。
本来、補助的な食品であるサプリメントが、広告により過大評価されていることにご注意ください。情報の信頼性を評価するにあたって、気をつけるべきポイントがあります。
“フェイクニュース”騒動
健康に不安を感じたとき、自覚症状をインターネットで検索して調べる方も多いのではないでしょうか。これに関して、ネット業界を揺るがす騒動が起きたことがあります。
2016年11月、大手IT企業ディー・エヌ・エー(DeNA)が運用する医療・ヘルスケア情報のまとめサイト「WELQ」が閉鎖されました。がんなどの病名をネット検索した際、同サイトが提供する不正確な医療情報が上位を占めることが批判され、責任を認めたためです。誤解を招き判断を誤らせるような情報を掲載していたほか、サプリメントの「ラクトフェリン」がノロウイルスや放射線防護に効くという「薬機法」に違反する情報もありました。同様のまとめサイトも問題となり改善されましたが、4年経った今でも危ない健康情報があふれています。
販売業者は心理学を悪用し、健康不安など「心理的な援助を求めている人は不安が強いので、どんな内容でも信じてしまう」ことにつけ込みます。「心地よい内容であれば、偽の情報でも信じやすい」消費者に夢を語り、サプリメントを売り込んでいます。
無料で手に入るネット情報も、作成には費用がかかっています。情報提供者が誰の利益を代表しているのかを見抜く必要があります。ネットに慣れた若者でも、ニュースと広告を区別している人の割合は4割にとどまるという調査結果があります。
私たちが個人の力で、大企業が作成し拡散させた“フェイクニュース”を排除することには限界があります。薬機法や景品表示法に基づく公的規制をきちんと実施するよう、政府に求めていきましょう。
※ 「くすりの話」は5月号からしばらくの間、休載します。ご了承ください。
いつでも元気 2021.4 No.353