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くすりの話

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くすりの話 
妊娠中の外用薬

回答/小倉知恵美(坂総合病院・薬剤師)
監修/高田満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 妊娠中の女性が外用薬を使用した場合に、胎児への影響について説明します。

●貼り薬・塗り薬※1

 妊娠中はさまざまな原因で腰痛になります。代表的な鎮痛剤である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)※2は妊娠中、特に後期(妊娠28週以降)に使用すると、胎児動脈管収縮(出産後に閉じるはずの動脈が出産前に閉じる)が起きる可能性があります。一部の薬剤では胎児の死亡例も報告されています。
 自宅にある薬を使用する前に、NSAIDsが含まれていないか成分をよく確認しましょう。病院では腰痛に対してNSAIDsを含まないアセトアミノフェンの飲み薬や、サリチル酸メチルを主成分とした冷湿布を処方することが多いです。
 また、「腰にお薬を貼る(塗る)と、お腹に近いので胎児に直接届くのではないか」と心配する妊婦さんがいます。貼り薬や塗り薬の成分は皮膚から吸収されると一部が血液中に溶け込んで全身を巡り、更にその一部が胎盤を介して赤ちゃんに届きます。胎児に近い場所に使ったからといって、より多くの成分が届くわけではありません。ただし、用法用量は必ず守ってください。
 腰痛は流産の前兆の可能性もあります。いつもと違う症状を感じたら、自分で判断せずに産婦人科を受診しましょう。

●うがい薬

 うがいは感染症予防に有効ですが、妊婦さんはうがい薬に含まれている「ポビドンヨード」と呼ばれるヨウ素の成分には気を付けてください。この成分が入ったうがい薬を連用すると、普段の食事で海藻類から摂取する量よりもはるかに多くのヨウ素を吸収し、ヨウ素過剰症を引き起こすことがあります。
 ヨウ素過剰症は、赤ちゃんの甲状腺機能の低下につながることもあります。うがいは水でも十分に効果があります。「喉が痛い」など、どうしてもうがい薬を使いたい時は、アズレンが主成分の薬を使用するのが良いでしょう。

●目薬

 目薬の成分が赤ちゃんに影響するほど、多量に体内に移行するとの報告は今のところありません。目薬は1滴でも十分に効果を発揮するので、用法用量をきちんと守りましょう。

 詳しい情報を知りたい場合は主治医に相談するか、「妊娠と薬情報センター」(国立成育医療研究センターのホームページ参照)などを利用してください。

※1 腰痛に用いる貼り薬や塗り薬にはテープ剤、パップ剤、ゲル剤などがあります。パップ剤はテープ剤より厚みがあり剥がしやすいものの、皮膚への薬剤浸透はテープ剤より劣ります。また、鎮痛剤の成分が入っているものと、入っていないもの(患部を冷やすだけの冷却シート)があります
※2 非ステロイド性抗炎症薬 成分名はロキソプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシン、フェルビナク、ジクロフェナクなど

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2018.5 No.319