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くすりの話

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くすりの話 
製薬会社の不正行為、なぜ

回答/東久保隆(兵庫県医療事業協・薬剤師)
監修/高田満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 昨年春、製薬会社の社員が、患者に無断でカルテを閲覧し論文を作成していたことが明らかになりました。このような不正は2011年に起こったディオバン事件でも記憶に新しいところです。
 全日本民医連は昨年6月12日、声明「バイエル薬品による組織ぐるみの不正行為に厳しく抗議します」を発表しました。

●全日本民医連が出した声明について、詳しく教えてください。

 宮崎県の診療所(民医連の事業所ではありません)で行われた抗凝固薬に関するアンケート調査に際して、バイエル薬品の社員が不正に持ち出した患者データを基に同社が論文を作成し、販売促進活動に利用したことがマスコミで報道されました。今回の会社ぐるみの行為は極めて悪質で、容認できるものではありません。この行為は診療所の医師も了解しており、関与した医師の行為も容認できません。
 この論文は2012年と2013年に雑誌に掲載されました。2016年に取り下げられましたが、数年間にわたり、同社の抗凝固薬の売り込みに利用されています。

●患者さんなどへの被害は

 患者さんの病名・検査データなど個人情報が持ち出されたことは、「個人情報保護」の観点から逸脱しています。さらに、副作用があった12例を厚生労働省に報告していないことが判明したことから、医薬品医療機器法に基づき、同省から報告命令が出されました。
 バイエル薬品の抗凝固薬の売り上げは、2013年の350億円から2016年の673億円へ急増しており、バイエル薬品の高収益の原動力となりました。この売り上げの財源は国民の税金と保険料なので、私たちにもその影響が及んでいると言えます。

●製薬会社が信頼を取り戻すには、どうすればよいのでしょうか?

 バイエル薬品に対して、関係省庁が下記の改善命令を出しました。
(1)「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守して医学系研究を実施するよう強く求める旨の通知
(2)個人情報の取り扱いに対する指導
(3)適正使用に資する適切な情報提供活動と倫理性の確保に対する改善指導
(4)副作用報告遅延に対する改善指導
 バイエル薬品は、2017年9月29日に再発防止の取り組みを公表し、社内の法令遵守と職員教育を徹底するとしています。
 今回の事態は売り上げ第一主義の結果であり、バイエル薬品の組織全体に「人の生命に関わる化学物質として医薬品を見る視点を発展させること」「人の健康、人権を第一とする企業の利益相反のマネジメント」「長期持続的な企業価値の向上の方針と短期的な利益至上主義にとらわれないこと」が何よりも求められます。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2018.1 No.315