くすりの話
高齢期と薬
回答/上野亜紀(福岡保健企画・薬剤師)
監修/高田満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)
高齢期になると、複数の病気を抱え、たくさんの薬を服用している方もいらっしゃるでしょう。
今回は高齢の方にとっての、薬との上手な付き合い方についてお話しします。
●高齢者の体の変化
口から飲んだ薬は胃や小腸で吸収され、血液を通じて全身に運ばれて、患部に届いて効果を発揮します。薬は徐々に肝臓で代謝(分解)されたり腎臓から排泄されて、効き目がなくなっていきます。
ところが、肝臓や腎臓の機能が低下すると、代謝や排泄までに時間がかかるようになり、薬が効きすぎたり、副作用が強く現れることがあります。
高齢期は若い頃に比べて肝臓や腎臓の機能が低下している場合もあるので、体調の変化に気をつけて、気になることがあれば医師や薬剤師に相談しましょう。
●ポリファーマシー
「ポリファーマシー」という言葉を耳にしたことはありませんか? 「ポリ」は「多くの」、ファーマシーは「薬」という意味で、「多剤投与」という意味です。
明確な定義はありませんが「6種類以上の薬を服用していると副作用が多くなる」「5種類以上で転倒するリスクが増える」などの事例が報告されていることから、5~6種類以上が「ポリファーマシー」の目安と言われています。
病気ごとに別の医療機関にかかっている場合は、似たような薬が重複して処方されていることもあります。市販の薬やサプリメントも含め、服用しているものは全て医師や薬剤師に伝えましょう。
●副作用
高齢期に起こりやすい薬の副作用は、ふらつき、転倒、物忘れです。ただし、副作用が怖いからといって、自己判断で薬を中止したり服用回数を減らすのは、とても危険です。副作用が起こる危険を減らすためにも、少ない薬で効果的な治療をすることが理想です。
●飲み忘れ・飲み間違い・飲み過ぎ
飲み忘れや飲み間違い、飲み過ぎを防ぐには、朝・昼・夕ごとに飲む薬をまとめるなど、工夫しましょう。薬を収納できるカレンダーは、よく利用されている工夫の1つです。
また、医師や薬剤師と相談して、服用回数や服用時間を変えることも効果的です。
●飲みづらいときは
「錠剤やカプセルが喉につかえる」「飲みづらい」という場合は、医師に相談し、剤型を変えてもらいましょう。飲み込みやすくするゼリー状のオブラートを使用するのもいいでしょう。
●たくさん残っている時は
薬がたくさん残っている時は、薬剤師にご相談ください。薬剤師が使える薬と使えない薬に仕分けして、処方日数を調整します。これは医療費の削減にもつながります。
薬について、分からないことや心配事があれば、なんでも薬剤師にご相談ください。
いつでも元気 2017.11 No.313