くすりの話 185 電子お薬手帳
5年前の東日本大震災の際、多くの医療機関が被災し、カルテが失われたなか、患者さんの持っていたお薬手帳だけが正確な処方内容を知る手段になりました。このことがきっかけとなってお薬手帳の重要性が再認識され、国は普及に力を入れています。
Q:電子お薬手帳とはなんですか?
A:スマートフォン(以下、スマホ)やICカードを利用して、現在服用中の薬の情報を、いつでも必要なときに閲覧できるものです。日本保険薬局協会、日本薬剤師会が提供しているもの、大手薬局チェーンやIT企業が独自に開発したものなどがあります。
Q:従来のお薬手帳より良い点は?
A:何よりも持ち運びがしやすい点です。紙のお薬手帳は忘れても、スマホや財布を忘れる人はあまりいませんよね。外出や旅行先で病気になった時や、予期せぬ非常時・災害時に威力を発揮します。また、紙のお薬手帳にはない服薬状況や飲み忘れを防ぐ便利機能がついているものもあります。インターネットに接続して薬の情報をすぐに調べることもできます。
Q:欠点は?
A:お薬手帳は医療者に見せる必要があります。個人情報の塊とも言えるスマホを、他人に見せることに抵抗をお持ちの方もいるでしょう。スマホではなくICカードの電子お薬手帳もあるので、それぞれの手帳の機能をよく知ってから利用されると良いでしょう。
最大の欠点は、薬局によって導入している電子お薬手帳の種類が異なるため、登録・閲覧ができない場合があることです。
Q:これから主流になっていくのですか?
A:電子お薬手帳は導入にコストがかかるため、導入をためらう薬局は少なくありません。将来、電子お薬手帳でも保険点数が認められれば、さらに普及する可能性はあります。
スマホの普及などIT技術の進歩はめざましく、今の状態は10年前には想像もつきませんでした。また2025年を目途に地域包括ケアシステムも構築されつつあります。個人情報保護の観点から厳格な管理が前提ですが、今後は医療情報を地域で共有し関連機関の連携を高め、安全で、有効、効率的な医療の実施が求められる時代になります。薬に限らずすべての医療情報が電子化され、入院から在宅に戻った際や、救急搬送でかかりつけ以外の病院を受診する際の情報共有のように、必要に応じて各医療施設からアクセスする時代が来ると思われます。
いつでも元気 2016.1 No.291