くすりの話 169 ポリオワクチン
Q:ポリオとはどんな病気ですか?
A:ポリオウイルスが人の口の中に入り、腸の中で増えることによって感染する病気です。
腸管で増えたウイルスは便の中に排泄され、その便からほかの人に感染します。つまり人から人へ感染する病気です。主に乳幼児がかかることが多い病気です が、抗体価(ウイルスに対する体内の抗体の量)が低い場合、まれに成人も感染することがあります。
ポリオウイルスに感染しても、多くの場合、はっきりポリオとわかる症状はあらわれません。無症状か軽い症状で回復し、ウイルスに対して免疫ができます。
しかし、腸管に入ったウイルスが脊髄の一部に入りこみ、手や足にまひがあらわれることがあります。まひはほとんどの場合一生残り、症状を軽快させたり、 進行を止めたりする特効薬は、今のところ残念ながらありません。まひが残ってしまったら、残された身体機能を生かすリハビリテーションをおこないます。
日本では1960年に大流行しました。このとき、全国の母親らとともに民医連も先頭にたって運動し、1961年、生ワクチンの緊急輸入と接種が実現しました。生ワクチン接種開始以降、流行は起こっていません。
Q:生ワクチンと不活化ワクチンの違いは?
A:生ワクチンは、ポリオウイルスの病原性を弱めてつくったワ クチンで、経口投与(内服)します。ポリオに感染したときとほぼ同じしくみで免疫をつけます。弱毒化されており、安全なワクチンですが、ごくまれにポリオ に感染したときと同じ症状(まひ)があらわれることがあります。
不活化ワクチンは、この問題を解決するために開発されました。ポリオウイルスを不活化(ウイルスが体内で増えないように処理すること)し、免疫をつくる のに必要な成分を取り出してつくられたワクチンを注射します。生ワクチンとの最大の違いは病原性がないことです。
2012年から生ワクチンの定期接種は中止され、不活化ワクチンに切りかえられ、単独ワクチンまたは4種混合ワクチン(百日咳、ジフテリア、破傷風、ポリオ)として接種されています。
Q:不活化ワクチンは安全なのですか?
A:不活化ワクチンは、ウイルスとしての働きはないので、ポリオと同じ症状があらわれることはありませんが、発熱・発疹・嘔吐・下痢などの副作用が出ることがあります。
また、ショック症状・けいれんなどの重篤な副作用も報告されていますので、注意が必要です。接種直後は十分に観察し、心配な症状があらわれるようでしたら、早めに医師に相談してください。
いつでも元気 2014.8 No.274