くすりの話 156 EPA製剤の薬局販売、大丈夫?
Q:高脂血症の薬が薬局で買えるようになるって聞いたけど
A:EPA製剤のことですね。EPAとは不飽和脂肪酸と言って、エネルギー代謝などで重要な役割を果たす物質です。アザラシの脂肪や魚、海藻などに多く含まれます。
1970年代の調査で、アザラシなどを主食としていたグリーンランドの先住民族イヌイットは、心臓病による死亡率がデンマークの白人にくらべて、非常に 低いことが認められました。その結果、EPAを多く摂取することで、心臓病を予防できることがわかりました。
不飽和脂肪酸の代表的なものにはリノレン酸があり、シソ油やエゴマ油にも含まれています。これらは体内で中性脂肪を下げ、“悪玉”と言われるLDLコレ ステロールを減少させ、動脈硬化を抑える働きがあります。一方、同じ不飽和脂肪酸でも、ベニバナ油やマーガリンに含まれているリノール酸は、体内でアラキ ドン酸に変化して、動脈硬化を促進すると言われています。
1990年にEPAを原料にしてつくられた「エパデール」は、高脂血症や閉塞性動脈硬化などに作用する薬として使用されるようになりましたが、昨年12 月、厚労省がOTC(一般用医薬品=処方せんがなくても買える薬)として認め、今年から販売されようとしています。
Q:なぜOTCとして認められたの?
A:厚労省は2002年、“生活習慣病”の薬にもOTC化を拡大する方針を決めました。「薬を手軽に買うことができるようになれば、医療費抑制にもつながる」というのが、その目的です。
これに対し、日本医師会は「生活習慣病の薬を自己判断で使用することは危険」「高脂血症には糖尿病や脂肪肝などが隠れている場合があり、それらの早期発見を妨げる可能性がある」と反対していました。
Q:薬局で買えば、病院に行かなくていいの?
A:EPA製剤の販売は、異例の条件が付いています。薬剤師がチェックシートを用いて、医療機関の受診の有無やその病院名、病名の診断日などの記入をします。つまり、まずは医療機関を受診して、診察や検査を受けないと購入できないということです。
また、EPA製剤を薬局で購入できるとされる病状は「健康診断などで指摘された、境界領域の中性脂肪値の改善」なので、「中性脂肪だけでなくコレステ ロールなども高い」と診断されれば、医療機関で治療を受けなくてはなりません。さらに、EPA製剤の効果を確認するには血液検査が必要です。結局は、医療 機関を受診しなければなりません。
長期間受診せずにEPA製剤を服用し続けるだけでは、高脂血症や動脈硬化は改善しません。また、重症化したり、高血圧や脳卒中などの合併症を起こしたりすることがあるので、定期的な受診をおすすめします。
いつでも元気 2013.5 No.259