くすりの話 118 インターネットによる医薬品販売
ことし6月から薬事法が改正され、インターネットなど通信販売による医薬品販売が原則禁止になりました。これまでは、薬局で買える一般用医薬品は、種類を 問わず自由にインターネットや電話で注文し、購入することができました。もちろん医薬品は本やDVDなどと同じ扱いではなく、これまでインターネット販売 業者も管理薬剤師を配置し、医薬品を販売できる許可を得ていました。
医薬品の害から国民の安全を守るため
今回の薬事法改正では、医薬品の人体に対するリスクに応じて「第1~3類」に分け、薬剤師または登録販売者が消費者にどのような情報提供をお こなうかを定めました。また、医薬品の販売は安全性重視の観点から人体へのリスクが少ない「第3類」(ビタミンや整腸剤など)を除き、「対面販売」を基本 とし、通信販売を禁止しました。
しかし、この改正に対して、名だたるネット販売業者は、インターネット上で署名活動を展開するなど猛反発しました。結果、法律が施行される2週間前、厚 労省は異例ともいえる「これまで利用していた方と離島に住む方に限り、2年間は通信販売を継続できる」とする妥協策を出しました。
ネット販売が禁止されたことで、「利便性が悪くなった」と思われるかもしれませんが、民医連は「医薬品の害から国民の安全を守るため」に専門家による対 面販売以外を禁止した今回の措置は大いに歓迎すべきことだと考えています。近くに薬局がない人や薬局に行けない人は、配置販売(置き薬)という販売制度を とっている業者もありますのでご検討ください。
6月に入り、従来のインターネット業者の大半は法に従って対応していますが、一部の業者は今回の改正を違憲として裁判をおこしています。
購入する側には何ら規制はない
一方、ネットによる医薬品販売は、販売する側を規制しているにすぎず、購入する側については何ら規制がないという問題があります。このため海 外からの医薬品の購入は、麻薬や覚醒剤といった別の法律で規制されているもの以外は自由です。法律の抜け穴ともいうべき、悩ましい問題です。
これまでも中国製のダイエット薬をインターネットで購入した人が死亡した例がありましたし、本来国内では処方せんが必要なバイアグラや精神安定剤なども ネット上では平気で取引されています。これら海外から個人輸入された医薬品で入院が必要な重い副作用がおきても、医薬品による被害者を救済する日本の「医 薬品健康被害救済制度」の適用になりません。また成分が不明な医薬品で中毒をおこした場合、正しい治療にたどりつくまでに時間がかかり、医療従事者にとっ てもたいへんな労力です。
インターネットで海外からの医薬品を購入することは絶対にやめましょう。
いつでも元気 2009.11 No.217