くすりの話 117 キューバの医薬品事情(下)
前回に続き、「キューバの医薬品事情」について紹介します。
各種ワクチン
キューバは、B型肝炎ワクチンやヒブワクチンなど、先進国で使用されているすべてのワクチンを国内で独自に開発し、製造しています。
とくにキューバでは急性B型肝炎になる患者が以前から多く、課題になっていました。しかし、ワクチンの開発と乳幼児への接種により、1999年以降は、5歳以下の感染は事実上根絶されました。
また、日本ではようやく昨年12月から導入されたヒブワクチンですが、キューバでは1999年から導入され、細菌性髄膜炎による死亡はほとんどないといった状況です。
キューバでは日本と違い、すべてのワクチンを全国民対象に公費で定期接種しています。これが感染症の根絶や保健衛生の向上につながっているといえます。
日本では、過去に予防接種による事件もあり、法律にもとづいて実施される定期接種と、個々人の判断でおこなう任意接種に分かれていますが、キューバでは すべてのワクチンが生後すぐから定期接種できます。定期接種には、地域のファミリードクター(家庭医)や、ポリクリニコ(地域診療所)が重要な役割をはた しています。
キューバ国内で開発されたワクチンは、国内のみならず約20カ国(カナダなどの先進国や、中南米・カリブ海諸国をはじめアフリカなど開発途上国)に輸出 し、大きな外貨獲得の手段となっています。海外での評価も高いことから、2001年にはWHO(世界保健機構)から品質管理技術の認定も受けました。
遺伝子組み換え製剤
キューバは遺伝子組み換え技術も発達しています。その技術を用いて多くの医薬品が製造されています。
急性心筋梗塞の際に血管内の血栓を溶かすために用いられるストレプトキナーゼ(日本ではウロキナーゼが一般的)、新生児の血管腫に用いるインターフェロ ンα2b、糖尿病性壊疽や皮膚潰瘍に用いられる上皮成長因子(Epidermal Growth Factor = EGF)製剤など、先進国顔負けの医薬品の開発が日々すすめられています。
とりわけEGF製剤は、めざましい効果を発揮しています。ベネズエラとの共同研究によるもので、糖尿病のために一般的には足を切断しなければならないほ ど重症の難治性の皮膚潰瘍患者を、約2カ月で歩いて退院するまでに回復させるという効果も確認されています。現在、キューバが開発したEGF製剤は、諸外 国で臨床試験や特許の申請がおこなわれています。
いつでも元気 2009.10 No.216
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