くすりの話 116 キューバの医薬品事情(上)
本誌5月号で、民医連のキューバ視察の内容を報告しました。ここでは「キューバにおける医薬品事情」について紹介したいと思います。
キューバは50年前の革命後、米国からの経済封鎖を受けたため、先進国からの医薬品の供給もままならない状況が続きました。そのため自らの力で医薬品やワクチンの開発をすすめなければなりませんでした。
そこで、キューバは日本など国交のある国に技術を学びながら独自の研究をすすめ、いまでは先進国にひけをとらない技術をもつに至り、キューバの医療を支えています。
キューバには首都ハバナを中心に、16カ所ものバイオテクノロジーや医薬品の国立研究所があります。研究所として独立しつつも、それぞれが競争するのではなく、相互に研究を分担して協力し合って成果をあげています。
以下、キューバの特徴的な医薬品についてご紹介しましょう。
高脂血症治療薬(PPG)
PPG(一般名:ポリコサノール)は、キューバが独自に開発したコレステロールを下げる薬で、世界的にも有名です。
原料は特産のサトウキビです。写真はハバナの空港内の薬局で筆者が購入したPPG10mgです。1箱30錠入りで23CUC(キューバ兌換ペソ)、日本 円で約2760円でした。高く思われるかもしれませんが、外国人は地元の通貨MN(キューバペソ)の24倍のCUCしか使えない決まりになっているため で、地元のレートでは1錠=約4円程度と思われます。
PPGの特徴は、コレステロールの中の悪玉コレステロール(LDL)を下げて、しかも善玉コレステロール(HDL)は上げるというすぐれものです。しか もこの主成分は米ぬかにも多く含まれている天然物であるため、一般に使用されているスタチン系薬剤(メバロチンなど)に比べ、副作用も極めて少ないことも 特徴です。
韓国を含め多くの国で使用されていますが、残念ながら日本ではサプリメントとして流通しているだけで、医薬品としては認可されていません。
【ドイツでの研究成果】
■対象:II型高脂血症患者(脂質異常症の中でも、とくにLDLが高いタイプをII型という)
■試験期間:2カ月
いつでも元気 2009.9 No.215