くすりの話 105 脱メタボ市場で注目を浴びる「トクホ」
Q:「メタボ」に効くという健康食品のCMをよく見かけますが?
A:メタボリックシンドローム(メタボ)の危険性を伝えるキャンペーンが、健康商品の売り上げを押し上げています。「動脈硬化につながる恐ろしい状態」「40代以上の男性は約半数が危険」など、商品宣伝の中で消費者の不安をあおっています。
消費者は、食事・運動などの生活改善よりも、手軽な健康食品にたよりがちです。その中で、「特定保健用食品(トクホ)」は厚生労働省のお墨付きがあることで信頼されています。
内臓脂肪型肥満に対して、体脂肪がつきにくい食用油、脂肪吸収を抑えるウーロン茶、コレステロールの吸収を減少させる食物繊維などが人気商品となっています。
しかし、人気の移り変わりは激しく、2003年ごろに大ヒットした脂肪の代謝を促進する緑茶は、他の飲料にとって代わられています。
Q:厚労省のお墨付きというのは?
A:トクホは、製品ごとに有効性と安全性を評価し、「食後の血中中性脂肪が上昇しにくい」「身体に脂肪がつきにくい」といった健康機能表示をすることが認められた商品です。
1991年に制度が作られ、初めの10年間は乳酸菌・食物繊維などを成分とした「お腹の調子を整える」製品が中心でした。その後、「歯の健康維持に役立 つ」キシリトール、脂肪関連製品が売り上げを伸ばし、トクホの名前をよく聞くようになっています。
2008年2月現在、760品目が許可されており、2007年の市場規模は6800億円でした。2005年以降、売り上げの伸びは鈍ってきましたが、一 般用医薬品(大衆薬)の売り上げを抜いて成長を続けています。
Q:効果は期待できますか?
A:トクホの製品は、人体実験により、安全性と有効性が確認されています。動物を使った安全性試験さえおこなっていないサプリメントが多い中で、信頼できる商品です。一方で、メーカーの発表する資料を見ても、その効果は弱いものです。
食後に血中の中性脂肪の上昇を20%抑えるというウーロン茶があります。しかし、摂取カロリーのうちで脂質の割合が30%の人で考えると、わずか6%のカロリー制限でしかありません。
また、煎茶10杯分に相当するカテキンを含む健康茶(340ml)を1本飲んで消費するカロリーは、約100キロカロリーにすぎません。マヨネーズ大さじ1.3杯(20g)分です。
メーカーは「多量に摂取することにより、疾病が治癒するものではありません」と注意表示をしていますが、メタボリックシンドロームへの不安をあおりなが ら商品の特徴を連呼するコマーシャルにのせられてしまいそうです。
効果の限界を理解しながら、トクホとつきあっていきたいですね。
いつでも元気 2008.5 No.199
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