くすりの話 102 飲む「コラーゲン」って何ですか?
Q:飲むコラーゲンのCMが目立ちますが…
A:現肌のハリを回復し、みずみずしい肌を保つサプリメントとして、コラーゲンが評判になっています。その中で人気があるのは、簡単に飲める美容飲料です。また、関節の痛みにも有効だとして売られています。
そもそもコラーゲンは繊維状のたんぱく質です。皮膚・骨などの部品となり、体の構造を支える重要な役割を果たしています。その量はきわめて多く、体内の たんぱく質の3分の1がコラーゲンです。皮膚はいつも同じに見えますが、その構成部品は次々と入れ替わっていきます。コラーゲンも分解と新生を繰り返して います。
コラーゲンを水とともに長時間加熱したものがゼラチンで、私たちは魚の煮こごりやゼリーとして昔から食べてきました。サプリメントとして売られているコ ラーゲンは、ゼラチンを部分消化し、吸収されやすいように加工したものです。
Q:飲んで効果はあるのでしょうか?
A:食べたコラーゲンが、そのまま皮膚の原料になるわけではありません。いったん、アミノ酸にまで分解されないと、新しく皮膚になるコラーゲンはつくれませんし、一方、どんなたんぱく質でもコラーゲンをつくる原料になります。
コラーゲンが果たす体内での役割は重要ですが、それを特別に食べ、補充することの根拠はありません。2002年国民栄養調査で、30代女性は 68.6gのたんぱく質を摂取しています。食事摂取基準では一日推奨量は60gであり、すでに十分なたんぱく質の量を摂取しています。そこへサプリメント で5gのコラーゲンを摂取しても、余分なエネルギー、ぜい肉となるのではないでしょうか。
Q:「効果実感の早い人では、就寝前に飲んで翌朝効果を体感…」などという宣伝も見ますが…
A:そんなCMや体験談が出回っています。皮膚の組織は28日ほどかけて入れ替わります。8時間で効果が出るというのは科学的な根拠がありません。宣伝にのせられ、効能を信じることで、違いがあったと感じているのではないでしょうか。
肌のハリを保つには、普通にたんぱく質をとっていれば十分です。また、適度な運動をしないと、骨の量は保てません。新陳代謝を進めるには、食事とともに運動面も考えた生活改善が必要でしょう。
コラーゲンを皮膚に塗った場合、肌のうるおいを保ち乾燥を防ぐという保湿効果が期待できます。外用のクリームなどの成分として使うことが、コラーゲン本来の使い方でしょう。
健康食品業界は、老化防止の万能薬として大ヒットしたコエンザイムQ10が売れなくなった後、次のトップ商品にしようと各社が競って売り出しブームをつ くろうとしています。宣伝にのせられて高価なゼラチンを買い、無駄づかいをしないように気をつけましょう。
いつでも元気 2007.11 No.193
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