くすりの話 69 米国のくすり事情あれこれ(2)
今回は、昨年夏の米国薬局見学で見聞きしてきた米国の薬剤師の仕事についてお話します。
「倫理性の高い職業」の1位に
米国では1988年から98年まで「正直さと倫理性の高い職業」の1位に薬剤師が選ばれています。
「医療に関する薬剤師の知識が広範にわたり、患者相談のときに、この知識を積極的に提供していることや、保険者や医師と忍耐強い交渉をすることで、顧客に 経済的な貢献をしている」ことが評価されているのです。
調剤がおもな仕事となっている日本の薬剤師とはだいぶちがいます。
保険会社と医師の間にたって
米国での薬剤師像というと「保険者と医師の間にたって、患者のふところ具合と治療のために電話でがんばって話している姿が思いうかぶ」といわれているそうです。一人ひとりの患者に適した治療を選択するパートナーとして、保険会社や医師との交渉にあたるのです。
そのほか薬剤師は、価格の高い新薬から、同じ成分で安い後発医薬品(ジェネリック)への切り替え、保険請求、糖尿病や喘息、エイズなどの患者の指導・管理などを行ないます。
日本では医師が処方せんを出して、外の薬局で薬をもらう「院外処方せん発行率」(医薬分業率)はようやく51%をこえましたが、米国では、それが常識で 「医薬分業」ということばもないくらいです。それだけ、米国では薬剤師の地位が高く、責任も重いといえます。
調剤業務はテクニシャンが
1960年代後半から、米国では「テクニシャン」とよばれる職種が調剤業務を行なうようになりました。テクニシャンとは、短大などでテクニシャン養成プログラムを修了し、試験に合格して得られる資格です。
私が今回見学した、民間保険会社(カイザー)が運営する薬局の窓口はテクニシャンが患者応対を行なっていましたが、患者からの問い合わせがあれば、薬剤師が答えることになっています。
米国の薬学教育は6年制
米国では、患者の相談業務や、薬剤使用の管理、医師など他の専門職と共同作業する能力を養成する必要から、薬学教育は6年制です。
わが国でも「過剰教育、大学運営への負担、学生の減少で供給不足となる」との批判があったものの、4年制から6年制への移行が検討されています。
いつでも元気 2004.2 No.148
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