くすりの話 47 薬害ヤコブと狂牛病
Q:薬害ヤコブ裁判でたたかっていた患者の谷たか子さんが1月に亡くなりました。裁判の結審も近づいていると聞きます。薬害ヤコブについて教えてください。
A:ヤコブ病とは、脳がスポンジ状に空洞化して、発症後数カ月で植物状態となり、1~2年のあいだに確実に死に至る病気で、現在、治療法はまったくありません。
ヤコブ病は100万人に1人しか発症しないきわめてまれな病気です。ところが、脳外科手術などで「ライオデュラ」というヒト乾燥硬膜を移植された患者さ んでは、その500倍の確率でヤコブ病が発症していることがわかりました。
日本ではこれまでに30万人以上の人にライオジュラが移植されたと言われ、厚生労働省が把握しているだけで、ライオデュラ移植によるヤコブ病感染者は、72人にのぼっています。
ライオデュラは、ドイツのBブラウン社がヒトの死体から採取した脳硬膜を加工して製品化したものです。Bブラウン社は病歴を確かめずに、死体からとった 脳硬膜を集めました。しかも、多数の硬膜を同じ容器でいっしょに処理し、感染予防としてはまったく効果のない滅菌方法で処理していました。日本の厚生省 は、これを「医療用具」として安易に輸入承認し、日本ビーエスエス社は、全世界の総販売量の35%を輸入し、販売していました
さらに1987年にアメリカで、ライオデュラの使用禁止・廃棄警告が出されたあとも、厚生省はその警告を無視し続け、結局、ライオデュラの回収命令を出 したのは1997年でした。薬害エイズとまったく同じ構造で、またしても薬害が引き起こされたことは本当に残念です。
現在、薬害ヤコブ病の患者さんと家族の方々が裁判をたたかっています。私たちも裁判の早期全面解決を求めて署名運動を広げています。
Q:5年前、イギリス政府が「変異型のヤコブ病の患者と狂牛病の関連が疑われる」と発表し、話題になりました。ことし2月には、日本で医薬品や美白化粧品の原 料に使っていた、牛の臓器や胎盤から抽出される成分の使用禁止が報道されていました。美白化粧品を使っていたので心配なのですが。
A:狂牛病は、プリオンと呼ばれる特殊なたんぱく質が原因とされ、家畜の牛が興奮状態に陥って死んでいく姿からこの名前がつきました。
プリオンが見つかるのは脳やせき髄などの神経組織と言われています。厚生省は昨年12月、安全性確保のため、これらを原料に使わないよう通知しました。感 染が確認されているわけではありませんが、これまでの薬害などの教訓から「疑わしきは使用しない」という予防措置をとったものです。
いつでも元気 2001.5 No.115
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