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いつでも元気

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まちのチカラ 静岡県西伊豆町 東洋一の夕陽と青の洞窟

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

伊豆半島屈指の景勝地、堂ヶ島。駿河湾に沈む夕陽は息をのむ美しさ

伊豆半島屈指の景勝地、堂ヶ島。駿河湾に沈む夕陽は息をのむ美しさ

伊豆半島の西岸に位置する西伊豆町。
美しい夕陽と青い海に浮かぶ島々、
自然と歴史が育んだ伝統食、
地球のロマンに触れられる名所も豊富です。
心まで黄金色に染まる町を訪ねました。

 東京駅から車で約3時間半、西伊豆町に到着しました。町の東は急峻な天城山系が連なり、その支脈が西の駿河湾まで迫ります。黒潮の影響を強く受ける温暖な海洋性気候で、車を降りるとその暖かな空気に包まれ、身体がすっと緩みました。海岸沿いには絵画のような景色がどこまでも続き、心を奪われます。
 まずは町北西部の堂ヶ島へ。伊豆半島屈指の景勝地で、海に目を向けると不思議な形をした島や岩が並んでいます。
 西伊豆町観光協会の鷹野純也さんが案内してくれたのは、見どころをぐるりと一周できる堂ヶ島散策コース。天井にぽっかりと穴の空いた天窓洞は、波の浸食で形成された洞窟で国の天然記念物です。天窓から降り注ぐ陽光が海水に差し込み、幻想的に青く光ります。
 堂ヶ島公園でも見学できますが、クルーズ船や遊覧船で神秘の海に出航するのもお勧め。約20分の「洞くつめぐり遊覧船」は、複雑なリアス式海岸と島々を巡り、夢とスリルあふれる青の洞窟へと向かいます。天候や時間により海の色が刻々と変化するので、何度訪れても新たな感動を味わえます。

太陽の音が聞こえる

 伊豆西南海岸は国の名勝指定を受け、とりわけ水平線に沈む美しい夕陽は町の誇り。町内に宿泊した方には、夕陽ボランティア(地元の写真愛好家)が夕陽ポイントを案内してくれます(要予約)。
 今回、撮影を指南してくれたのは佐野重長さんと山本一磨さん。「西伊豆町は東洋一の夕陽スポットです」とカメラのセッティングをしながら、堂ヶ島の夕陽ポイントで日没を待ちます。
 町には堂ヶ島のほかにも、大田子海岸やクリスタルビーチ、安良里漁港などロマンチックな夕陽を観られる名所が点在。夕陽ボランティアは、その日の天候や太陽の沈む位置などによって〝今日の夕陽ポイント〟を提案します。
 「真っ赤な太陽が水平線にかかる瞬間に、じゅーって音がするのを感じとってシャッターを押してごらん」と佐野さん。情熱的な撮影タイムの始まりです。日没後の薄明かりの海岸は、まるで映画のワンシーン。夕陽の町の魔法に、かかってみてください。

漁師町の伝統食 潮鰹

 町には大自然と歴史に育まれた魅力的な特産品があります。田子地区にある創業140年のカネサ鰹節商店では、絶滅危惧食材とも言われる潮鰹を製造。1882年の創業時からの製法を守り続けています。
 潮鰹の起源は奈良時代までさかのぼり、田子の小さな漁師町でも古くから作られ、別名「正月魚」とも言われます。正月に航海の安全と豊漁豊作を祈願し、稲わらで飾りつけた潮鰹を神棚にお供えしました。鰹と塩のみで作られ、鰹節と違って身は半生。出汁を取るのではなく、身そのものを味わいます。
 5代目の芹沢安久さんは「変わらない文化を未来に残していくために、今の時代にあった新しい食べ方を提案しています」と語ります。究極の保存食として、潮鰹を使った宇宙食を開発する構想も。
 堂ヶ島食堂で潮鰹を使ったご当地グルメ「潮カツオうどん」を注文しました。細かく切った潮鰹と生卵、ネギ、しょうが、海苔、ゴマ、カツオ節をうどんにのせ、特製醤油を絡めていただきます。潮鰹の強い旨味と風味を卵が包み、箸が進みます。食欲がない時やお酒のシメにもぴったり。伝統食の新しい一品を、ぜひご賞味ください。

地球の鼓動 ジオサイト

 町を含む伊豆半島全体は、地質学などの観点から重要な地層・地形の保護と活用を目的として、ユネスコ世界ジオパークに認定されています。
 伊豆半島ジオガイド協会の仲田慶枝さんに、貴重なジオサイト(地球の活動が分かる地形)である一色の枕状溶岩を案内してもらいました。伊豆半島最古の地層を見ることができます。
 「美しい景観も温泉も、おいしくて多様な魚介類も、どれもジオ(地球・大地)の恵み。そして、私たちもジオの一部なのです」と仲田さん。町の大部分が海底火山時代の地層の上に成り立っているそうです。
 続いて、観光客に人気の黄金崎公園へ。夕陽を浴びて黄金色に輝く岩石の色は、高温の温泉水や地熱による変質作用で染め上げられたもの。1988年には県の天然記念物に指定されました。町内にはジオサイトが他にもたくさんあり、大地の恵みを体感することができます。
 町はまさに「地球と大地の公園」。あなたも、ジオツアーで大地の息吹を感じてみては?

 他にも、のどかな港の景色、風情ある街並みなど、ガイドブックにのっていない場所にも心に染みる風景が広がっています。誰かに「おかえり」と言われているような、心がほわっと温まる西伊豆町。ここでしか出会えない風と味を、堪能してください。

■次回は鹿児島県さつま町です。

 

まちのデータ

人口
6,624人(2月1日現在)
おすすめの特産品
潮鰹、天草、わさび、柑橘類、干物
アクセス
海老名JCTから車で2時間20分、東京駅から電車とバスを乗り継いで3時間40分
問い合わせ
西伊豆町観光協会
0558-52-1268

いつでも元気 2025.4 No.401