ケアマネの八面六臂な日々
福祉用具を選ぶ視点
車いすや歩行器、介護用ベッドなど「福祉用具」は、障がいのある方や介護が必要な方が自分らしく日常生活を送るために、なくてはならない道具です。
福祉用具は年々進化しています。毎年秋に東京で開催される「国際福祉機器展」では、最先端技術を活用した福祉用具を体験できます。私の所属する法人は、業務保障で全員が参加できるようにしていますが、展覧会は3日間の開催なので、業務の都合上参加できないこともあります。福祉用具の進化のスピードに、ケアマネの知識が追い付かないのが正直なところです。
人は道具を使うために二足歩行になり、道具をうまく使いこなすことこそ、人間が人間であるゆえんと聞いたことがあります。福祉用具は命を守る道具なので、使用にあたっては慎重に不具合がないように、事故につながらないような選定が必要です。
以前、福祉用具のお試し利用を禁止した自治体がありました。「福祉用具のお試しは洋服の試着と同じで、自分の状態に合っているのかどうか、試してみることが絶対に必要です」と抗議したことがありました。
65歳のAさんは要介護3ですが、現役の開業医師です。ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断されても医師として毎日通勤し、診察をしています。
Aさんは医療保険のリハビリに通っていますが、徐々に日常生活に支障が出てきました。そこで福祉用具専門相談員の資格があるケアマネが理学療法士らと相談しながら、その時々の動作に合わせた歩行器や車いすなどを提案しました。
ケアマネの福祉用具選定のアセスメントと、ケアマネの依頼にその都度スピーディーに対応する福祉用具会社の担当者の連携が見事だなと、感心して見守っています。
福祉用具はこれまでレンタルが基本でしたが、2024年度の介護報酬改定で、「固定用スロープ」「歩行器」「歩行補助杖」の3種類が購入かレンタルかの選択制に変えられました。
自分専用として福祉用具を購入したい方もいますが、その時の体の状態に合った福祉用具を選ぶことが本来の道具の使い方であり、私はレンタルを推奨したいです。
石田美恵
全日本民医連「ケアマネジメント委員会」委員長
※11月号で「貯金がたまって生活保護が中止になった」との趣旨の記述がありましたが、誌面に登場する利用者の住む自治体の事例です。生活保護費の使い道は貯金も含め、本来は利用者自身が決めるものです。
いつでも元気 2025.1 No.398
- 記事関連ワード
- ケアマネ