青の森 緑の海
2025年の干支は巳。ヘビの写真は山ほどあるが、妻も含めて苦手な方も多く、別のニョロニョロ系生物に登場してもらうことにした。
これは「ミゾヤギ」というサンゴの仲間。ムチのように細長く伸び、流れてくるプランクトンを捕まえて食べる。ムチの表面に小さなイソギンチャクが並んでいる感じだ。
案内してくれたのは慶良間諸島・阿嘉島のダイビングサービス「ブルー・プラネット」の吉村剛さん。同い年で、僕とほぼ同時期に沖縄へやって来た。大学でダイビング部にいた僕が島へ潜りに行った時、ガイド修業中の彼に出会ったのが縁だ。
まだ何者でもなかった僕たち。剛が当時働いていたダイビングサービスのオーナーに、彼は「青年」、僕は「学生」と呼ばれていた。オーナーに「写真家になんか絶対なれない」と言われ、大層悔しかったことを覚えている。
その後、僕は写真を続けたことで写真家になり、剛も独立してサービスを立ち上げ、30年あまりコツコツと海のことを学び続けた。
ひとつの場所に根を下ろし潜り続けることは、苦労も並大抵ではない反面、自然をひときわ深く理解することができる。同じように、南西諸島の森をずっと見てきた僕の視点と共通するような気がしている。
ミゾヤギはしなやかな動物だ。大型のテーブルサンゴがひっくり返るような台風の時も、強烈なうねりに折れることはない。流れに合わせてやりすごし、生き続ける。その生き方は憧れだ。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。写真集の購入はホームページまで。
http://www.shinyaimaizumi.com/
いつでも元気 2025.1 No.398