ケアマネの八面六臂な日々
生活保護のこと
生活保護は、憲法25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」を保障する制度です。生活保護の申請は国民の権利ですが、自治体の窓口で行政側が申請を阻む〝水際作戦〟という対応が問題になっています。
私がケアマネとして担当した要介護3のAさん(83歳)は、軽度の認知症があるものの、以前から一人暮らしを希望していました。Aさんは無年金のため、私から家族にAさんの生活保護を提案しました。
ある日、長女(52歳)が福祉事務所に生活保護の申請に行くことになりました。「ケアマネとして一緒に行きますよ」と声をかけましたが、「まずは一人で行かせてください」と話す長女の気持ちを尊重しました。
長女が福祉事務所に着くと、対応した職員は開口一番、「ケアマネは何をしているんですか?」と言ったそうです。まるで「ケアマネが一緒に来ないことがおかしい」と言わんばかりで、この場では生活保護の申請はできませんでした。2回目の申請には共産党区議の方に同席してもらい、受理されました。
Aさんは福祉用具を使っています。生活保護受給者が福祉用具を購入する場合、ケアマネは7~8枚もの書類を福祉事務所に提出します。手間はかかりますが、受給者の健康を守るうえでも、また、生活保護の担当者に受給者の生活を分かってもらううえでも必要な作業です。
ケアマネと同じく、自治体職員も本来は住民の生活を支援する立場で、お互い協力できるはずです。ところが、受給者の貯金がたまったことを理由に生活保護が中止になると、まるで自分の手柄のように話す職員もいました。
「貯金がたまると生活保護が中止になります」と利用者に説明しても、「今後が不安だから」と生活を切り詰めてまで貯金する方もいます。
生活保護が中止されると、精神状態が悪化する恐れのある方の場合、「何とか受給を続ける手立てはないだろうか」と生活保護の担当者に相談します。しかし、関心を示さない職員に出会うこともあり、がっかりします。案の定、中止後に精神状態が不安定になり対応に苦慮したこともありました。
石田美恵
全日本民医連「ケアマネジメント委員会」委員長
いつでも元気 2024.11 No.396
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