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いつでも元気

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まちのチカラ 徳島県海陽町 海と太陽 心解放される町

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

コバルトブルーの海に島や奇岩が浮かぶ水床湾

コバルトブルーの海に島や奇岩が浮かぶ水床湾

 徳島県南端の海陽町。
 青く輝く絵画のような水床湾や、新鮮な海賊料理など海の恵みが豊富で古民家で体験するヨガも魅力。
 黒潮の香り漂う町を訪ねました。

 徳島阿波おどり空港から車で2時間半、太平洋を臨む海陽町に到着しました。海沿いは室戸阿南海岸国定公園に指定され、数々の岬や入江があるリアス式海岸です。
 まずは海陽町を代表する水床湾へ。青い海に点在する大小の島々、幾千年の波濤に洗われて創られた奇岩など、絵のように美しい風景が広がります。
 ダイビングやシーカヤックも楽しめますが、気軽に海を巡るなら海中観光船「ブルーマリン」に乗船してみてはいかがでしょうか。船底に窓が設けられた船で国定公園を巡る、約40分間のクルージングです。
 不思議な形をした珊瑚や、カラフルな熱帯魚のいる海中を座ったままで間近にのぞくことができます。時期によってはイルカの群れが近くを泳ぎ、貴重な珊瑚の産卵シーンを観察できるナイトクルーズもあります。ただし現在は船体の修理のため休止中。再開はホームページなどで確認してください。

生きた海の幸 海賊料理

 町ならではの食を味わうなら海賊料理がお勧め。徳島県南部の名物料理で、新鮮な海老や貝などの魚介類を生きたまま焼いて食べます。かつて海賊が海の幸を分け合って食べていたイメージを彷彿とさせる驚きの料理。水床湾の「元祖海賊料理 海賊の家」を訪ねました。
 店は海の上に浮かんだ筏小屋で、周囲の生け簀に近海で獲れた生き生きした魚が泳いでいます。運ばれてきた大皿は豪快で、大きなイセエビ、カラフルなヒオウギ貝、大アサリ、サザエが全部生きたまま乗っています。それらを炭火の上に置いて焼き始めると、うねうねと悶えてインパクトがあります。
 「生きた魚介類はおいしさが全然違います。海の資源を満喫してもらえたら」と、店主の浜部賀津秀さん。素材の良さを活かそうと、味付けは醤油や自家製ゆずだれなどシンプル。ぷりっとしたイセエビは天然の甘みが広がり、ヒオウギ貝はシャキシャキの食感です。海の魅力を存分に引き出した、野趣あふれる料理をゆっくりお楽しみください。

魅力発見ガイドツアー

 町のNPO法人あったかいようが地域の魅力を発見するガイドツアーを提供していると聞き、参加しました。まずは阿佐海岸鉄道の海部駅で、地元に精通したガイドのラフォンテーヌ裕子さん、小原園栄さんと合流です。
 最初に向かったのは南部の母川。川の下流には、大岩の割れ目に隠れていたウナギが大きくなり、岩を真っ二つにせり割ったという伝説の残る「せり割り岩」があります。 
 次は弘法大師ゆかりの灯明杉がある浪切不動尊へ。灯明杉は弘法大師が挿した杉の箸が芽をふき、巨木になったといわれる杉です。杉の奥に祀られた不動尊にお参りする人が、杉の間を通る際に悪い心を持っていると挟まって通れなくなるといわれます。
 境内には苔むした石段や古い木々があり、人々を神秘的な世界へ誘います。不動尊は海の守護神として長い歴史を持ち、航海の無事を祈願する多くの参拝者が訪れました。
 最後は海部川の上流にある轟の滝へ。「日本の滝百選」のひとつで、四国有数の大滝として知られます。山全体が滝の回廊のようで、さまざまな趣のある大小の滝が連続してあり、総称して「轟九十九滝」と呼ばれます。本滝は58mの断崖から勇壮に落ち、その姿を目前に白い水しぶきをいつまでも浴びていたくなります。
 「海も川も山も、自然が豊かな海陽町は魅力いっぱい。歴史を知ることで、より楽しんでもらいたい」と太陽のような笑顔で案内するラフォンテーヌさんと小原さん。温かいおもてなしとともに、地域を深く理解することができました。

古民家でヨガ

 町の中心部から車で30分、山間部の小さな集落を訪れました。ヨガインストラクターの永野吉晃さんと、玄米菜食の料理を作る奈実さんが、4歳の長男と3人で暮らしながら古民家ゲストハウスKUO GREEN VILLAGEを営んでいます。
 ヨガの講師として全国を巡り歩いた吉晃さんが、「本場インドの学びを実践するのに相性がいい」と海陽町を気に入り移住しました。川のほとりに静かにたたずむ古民家は携帯の電波もほとんど届かず、蛇口をひねればおいしい湧水が。川沿いのウッドデッキでプライベートヨガクラスを受けることができ、初心者でも分かりやすくヨガの呼吸法やアーサナ(ポーズ)を体験することができます。
 たとえ身体が硬くても、澄んだ空気の中で深い呼吸をするだけで、体と心がクリアになりエネルギーが満ちてくる喜びを感じます。「ここは雑音がなく、自分の内側とじっくり向き合える場所。何もない豊かさを感じてもらえれば」と、永野さん。素朴な雰囲気で訪れる人々をリラックスさせてくれます。

 美しい自然、歴史と文化、そして新鮮な食材が揃う海陽町は、心を解放できる場所。自然に身を委ねた時に広がる体験が、私たちの心身を癒やしてくれるでしょう。

■次回は山口県田布施町です。

まちのデータ

人口
8291人(3月末現在)
おすすめの特産品
うつぼ珍味、寒茶
アクセス
徳島阿波おどり空港から車で約2時間半
問い合わせ先
海陽町観光協会
0884-76-3050

いつでも元気 2024.11 No.396