青の森 緑の海
「自然」と一括りに言っても、その中身は時代や人間の営為とともに変容していく。緑の葉を茂らせる樹々は、僕たちの心にいつも寄り添ってくれているが、時に切ない風景を見せることもある。
沖縄の海岸で過ごした方なら必ず目にする木、モクマオウ。オーストラリアや東南アジア原産で、防風林用途や薪用として沖縄へ持ち込まれた。無数の種をばらまくため、各地で繁茂し勢力を拡げていった。
モクマオウの外来種としての問題点は、松の葉に似た落ち葉を大量に落とすこと。細かい葉(正確には茎)がまさに「降り積もる」ため、地面が埋め尽くされてしまい、在来の植物が生育できなくなってしまう。モクマオウの「駆除」に取り組む自治体もあるが、範囲が広くなかなか手が回らない。
写真は沖縄本島南部、南城市にある佐敷干潟で撮影した風景。高さ10mほどに成長したモクマオウが並んで倒れている。繁殖力旺盛な彼らが、どうしたことだろう。
樹高が低い時のモクマオウは材も硬く強靭だ。しかし樹高が高くなったとき、干潟のような軟弱な地盤では足をすくわれ、高潮や台風の時に倒れてしまうのではないだろうか。その光景は、人間に運命を左右された生きものの悲しい末路として僕には映る。
環境省は9月、奄美大島のマングースの「根絶」を宣言した。ハブ対策として、人間が勝手に持ち込んでから45年。モクマオウもマングースも、僕たちと同じ生命の重さを持つことを忘れてはならないだろう。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然の
いのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。写真集の購入はホームページまで。
http://www.shinyaimaizumi.com/
いつでも元気 2024.11 No.396