百均で防災
文・新井健治(編集部) 写真・豆塚猛
広島中央保健生協田方支部(広島市西区)は、
2021年に「防災カフェ班」をスタート。
〝カフェ〞の名称は「お茶でも飲みながら、気軽に防災を語ろう」との狙いから。
百均(100円ショップ)で買える防災グッズや防災食を紹介するなど、
毎月1回楽しく活動しています。
班会の様子は組合員理事の山下則江さんが、全日本民医連
共同組織活動交流集会(岡山市)の分科会(9月30日)で発表します。
取材した7月21日は、田方集会所に組合員や地域住民24人が集合。防災士※の資格を持ち、広島市から支給された黄色いビブスを着た防災カフェ班のメンバー7人がテキパキと準備をします。
防災士の木本美代さんが百均で購入した防災グッズを紹介。①避難②衛生③救急用品④日用品に分けて説明しました(表1)。
「防災リュックに入れた30点のグッズのうち、8割を百均で揃えました。ホームセンターの防災コーナーだと、1000円以上する商品も。百均なら『あれも防災に使える、これも使える』と買い物が楽しみになります」と言います。参加者から「防災グッズというと高くつくイメージがあるが、身近で揃えられるので参考になった」「防災が楽しみになった」との感想がありました。
グッズに続き、百均で買える防災食を紹介。一般的な缶詰のほか、乾麺やパスタ、ふりかけやドライフルーツなどもあります。「普段から多めに買い置きして、消費した分を買い足す『ローリングストック』を実践してみてください」と木本さん。講義のあとは、レトルトご飯に缶詰のカレーをかけた防災食を参加者全員で試食。「おいしい」との声があがりました。
田方支部の三上恵利子支部長は「試食会など楽しい催しをすれば、また来たいと思ってもらえる。普段の暮らしの中で防災を位置づけ、地道に続けることが大切です」と言います。9月1日(防災の日)の班会では、太陽光で調理する「ソーラークッキング」もしました。
普段の生活の延長として
2018年の西日本豪雨で、広島県は大きな被害を受けました。防災カフェ班は21年2月に発足。そのわずか半年後の8月、田方地区の一部に大雨の影響で土砂崩れが起き、班のメンバーが泥出しなどの支援をしました。
今年も7〜8月に全国各地で大きな水害が発生。それでも、なかなか防災が住民の話題にはなりません。班長の岡本和枝さんは「防災は難しい、堅苦しいというイメージも。班の活動を通して、日常生活の延長として防災を捉えることができれば」と言います。
2月に防災士の資格を取得した原喜美江さんは「体験型の活動を通して災害は身近に起きることを実感しました。防災士の資格を取ったことで、職場の同僚も防災に興味を持ってくれます」と話しました。
命を守る活動を
この日の班会では最初に、東日本大震災(2011年)で激しく揺れる仙台空港の様子を動画で上映。緊急避難警報も鳴らし、机の下に隠れる訓練もしました。
三上支部長は「この地域は一人暮らしの高齢者が多く、水害が迫っていても住み慣れた自宅を離れるのは嫌がるもの。班会で顔見知りの関係をつくっておけば、一緒に避難してくれます」と、日頃のつながりの重要性を強調します。
班では管理栄養士をめざす大学生と、栄養バランスを考えた防災食づくりを体験するなど、さまざまな活動をしています(表2)。
共同組織活動交流集会で発表する山下則江さんは「医療生協の理念である健康づくりとともに、命を守る活動も大切。南海トラフ地震も、いつ起きるか分からない。いざという時に、〝日常〟に〝非日常〟を取り入れた班の活動を思い出してほしい」と話しました。
※防災士防災に関する知識や技能を持つ人に付与される民間資格。広島市は2017年から防災士養成講座を開いている
いつでも元気 2024.10 No.395
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