青の森 緑の海
環境省から依頼された、徳之島の生きものの撮影がセカンドステージに入った。2回目の撮影でも僕のテーマは同じ。島の自然の魅力を最大限に引き出し、間もなくオープンする「徳之島世界遺産センター」に来た人に〝自然を少しでも深く理解してもらう〟こと。私自身は30代、40代に比べて体力も視力も落ちているのに、撮れる写真のパワーが上がっているのは不思議だ。
徳之島には何種類ものカエルが住んでいる。山の沢にはハナサキガエル、湿地にはアカガエルやアオガエル。それぞれの生活スタイルや繁殖期は微妙に違う。年間を通じて撮影していると、ひとつの種類が鳴き終わると次の種類の鳴き声が聞こえてくる、といった自然のリズムが心地よい。
写真のオタマジャクシは日本固有種のヒメアマガエル。奄美から西表島あたりにかけて見られる、体長2~3㎝の日本最小のカエルだ。
生息地の重なるリュウキュウカジカガエルのオタマが水底にいるのに対し、ヒメアマガエルのオタマは水面付近を泳ぐ。目玉も頭の両端に離れていて、ほかのカエルと少し違った顔つきをしている。
ヒメアマガエルの繁殖期には、ヒメハブやガラスヒバァなどのヘビ類も池や沼に集まる。その試練をくぐり抜けてカップルは卵を産み、しばらくするとかわいいオタマたちが誕生する。何十年、何百年と繰り返されてきた命湧く風景だ。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然の
いのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。写真集の購入はホームページまで。
http://www.shinyaimaizumi.com/
いつでも元気 2024.10 No.395