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いつでも元気

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けんこう教室 鍼灸治療と養生(上)

鍼や灸などを使う東洋医学の診察方法や治療について、
川端鍼灸治療院(京都民医連)の岡貞充さんに
2回連載で教えていただきます

京都・川端鍼灸治療院 全日本鍼灸学会認定鍼灸師 岡 貞充

京都・川端鍼灸治療院
全日本鍼灸学会認定鍼灸師
岡 貞充

 私は幼少の頃、ネフローゼ症候群という腎臓病にかかりました。投薬で治ったものの、食欲不振や不眠、むくみなどの副作用に苦しみました。
 医療で自分の心と身体が救われた経験は大きく、何となく将来は医療系の仕事に就きたいなと思っていました。一方で薬の副作用に苦しんだ経験も、私の進路に影響を与えたようです。
 中学・高校を経て、大学受験を考える時期になりました。一人暮らしは体力的にも難しく、家から通える大学を考えたときに、副作用が少ないと言われている東洋医学(鍼灸治療)を学べる明治鍼灸大学(当時は唯一の鍼灸大学、現・明治国際医療大学)があることを知り、受験したのでした。

民医連の鍼灸院

 無事に大学へ進学して、鍼灸師の国家資格を取得。整形外科医院での勤務を経て、2003年に川端鍼灸治療院(京都市左京区)に入職しました。
 当院は1975年の設立以来、東西両医学の知識に基づき病態把握と治療を行ってきました。必要に応じて併設の診療所へ紹介するなど、医療・介護施設とのつながりを生かした連携も強みです。現在は鍼灸師4人(うち1人は「あん摩マッサージ指圧師」の免許も取得)と事務職員2人で日々の診療に取り組んでいます。
 当院の特徴の1つに「よもぎの会」という友の会組織を挙げることができます(7月号表紙に登場)。「いつでも、どこでも、誰もが安心してかかれる鍼灸治療」の実現を目指して、1990年に発足しました。
 よもぎの会は「東洋医学の正しい理解と啓蒙に努める」「会員相互の親睦と交流を図る」「鍼灸治療にかかりやすくするため、健康保険の適用を目指す」を3本柱として活動しています。国会への請願署名のほか、よもぎの会の運動が京都市の「はり・きゅう・マッサージ施術費助成事業」の創設につながったこともありました。

2003年10月施行。現在は京都市在住の75歳以上の方に対し、1回1000円の割引券を年4枚交付

特徴的な診察方法

 東洋医学の特徴についてお話しします。東洋医学では五感をフルに使って、「四診」と呼ばれる診察方法を用います。四診は「望診」「聞診」「問診」「切診」の4つで、以下のように説明されます。
【望診】 視覚から得る情報で診察します。顔色や身体つき、皮膚の色つや、目の色や動き、歩く姿勢などを診ます。舌の色や状態を診るのも重要です。
【聞診】嗅覚と聴覚から得る情報で診察します。口臭や体臭、声の高さやかすれ、せきや胸の音なども参考にします。
【問診】患者さんとの対話による診察です。現在の主な症状だけでなく全身の状態や既往歴、日常生活の細かなところまで聞いて、体質や病気の原因を探ります。
【切診】触覚から得る情報で診察します。脈やお腹に触れたり、全身のツボの反応などを診ていきます。
 西洋医学で問診や検査結果から病名を診断するように、東洋医学では四診から「証」を導き出します。証は診断にあたるもので、証を決定して治療を開始します。

資料1 人間の身体

資料1 人間の身体

気の流れを整える

 東洋医学では、病気の原因をどう捉えているのでしょうか。前提として、人間の身体は「気」「血」「水」から構成されているという考え方があります(資料1)。
 気は生きるために必要なエネルギーで、血と水を全身に行き渡らせます。血は主に血液のことで、栄養やホルモンなどを含みます。水は血液以外の水分のことで、汗やリンパ液、唾液などを含みます。
 気は遺伝的な体質などの〝先天の気〟と、環境や食事などの〝後天の気〟に分かれます。これらの要素が病気の原因に深く関わっていると考えられます(8ページの資料2)。
 気・血・水が全身を十分にくまなく流れている状態を正常とすると、その流れに滞りや偏りが生じたり不足している状態が不調です。気・血・水の流れをよくして全体のバランスを整え、自然治癒力を高めるのが東洋医学のアプローチです。
 具体的には鍼や灸などを使うわけですが、そこで重要になるのがよく知られる「ツボ」です。気の通り道である経絡の上には361カ所のツボ(経穴)があり、それらのツボに刺激を与えることで気の流れを整えます。

健康保険の適用拡大を

 一般論として、西洋医学は局所的で対症療法的な治療が得意なのに対して、東洋医学は心身の全体を総合的に診てバランスを整えていく治療です。当院では両方の〝いいとこ取り〟をお勧めしています。
 西洋医学ではっきりとした病名のつかない症状や自律神経の乱れ、虚弱体質などに対して、東洋医学がお役に立てるかもしれません。漢方薬は自然界にある草木などを原料にするため、副作用の心配が少なく、安心して服用していただけます。
 また、鍼灸治療は全身を総合的に診察するため、時間をかけて(当院では約50分)じっくり患者さんに向き合うのも特長です。心と身体が深く関わりあっているという「心身一如」の考え方も、東洋医学の重要な柱になっています。
 健康保険が適用される鍼灸治療を資料3に示しました。もっとみなさんのお役に立てるように、医学的な根拠を示しながら適用範囲を広げていければと願っています。
 次回は東洋医学の具体的な治療やメリットについて詳しくお話しします。

 

資料2 病気の原因

資料2 病気の原因

資料3 健康保険が適用される鍼灸治療

資料3 健康保険が適用される鍼灸治療

 

いつでも元気 2024.9 No.394