ケアマネの八面六臂な日々
待合室で待つ理由
2021年度の介護報酬改定で、「通院時情報連携加算」という新たな項目ができました。利用者が病院や診療所で医師や歯科医師の診察を受ける際、ケアマネジャーが同席し、利用者の心身の状況や生活環境など必要な情報を共有する制度です。
この加算の取得には、ケアマネが医療機関から必要な情報の提供を受けて、ケアプランに記録する必要があります。利用者一人につき一カ月に一度、50単位を算定します(地域によって違いますが、1単位は約10円です)。
外来診療は、生活と医療の接点が分かる大切な現場です。私はこの制度ができる前から、気になる方はなるべく診察に同行するようにしていました。
介護保険制度が始まって間もない頃、ケアマネが利用者と一緒に診察室に入ると、「個人情報だから」と医師から退席するように叱責されたことがありました。利用者に代わって、診察代を請求されたこともあります。
加算は500円程度ですが、受付が混んでいれば利用者さんと一緒に順番を待ち、一日がかりの仕事になることもあります。〝費用対効果〟を考え、通院同行を行わない事業所もあると聞きます。
家族によっては仕事が多忙で、「病院に行くために、わざわざ休めないから」と、ケアマネに受診の付き添いを求めることがあります。
ご家族のみならず、看護師でも「診察にはケアマネさんが同行してくれるんですよね」と、当たり前のように言う方もいます。一方、待合室でケアマネを見かけると、優しく声をかけてくれる職員もいて何気ない一言に癒やされます。
通院同行は大変ですが、ケアマネとして「利用者さんの医療にかかわる情報を主治医から直接聞きたい」「いまの生活環境が病状に影響を与えていないか、主治医に相談したい」との思いがあります。
また、診察室で利用者さんの言いたいことが主治医にきちんと伝わっているのか、主治医の説明を聞き取れているのかなど、気になることはたくさんあり、通院同行に時間を割きます。
決して時間に余裕があるから、待合室で利用者さんと一緒に待っているわけではありません。
石田美恵
東京民医連のケアサポート千住(足立区)所長
全日本民医連「ケアマネジメント委員会」委員長
いつでも元気 2024.8 No.393