青の森 緑の海
多様な鳥が住む南の島々。なかでもアマミヤマシギはあまり知られていない個性的な鳥だ。どちらかというと夜行性であること、落ち葉に似たカモフラージュが優秀であることが、彼らの存在を謎めかせている。
夜の林道を車で走ると、道端の茂みなどにじっとしている姿に出会う。あまりにカモフラージュが見事なので気づかずに近づいてしまい、突然の羽音に驚くこともしばしば。
ミミズなどの土壌生物を求めて夜の公園や畑などにも姿を見せるが、実は絶滅危惧種に指定されている。営巣地が地上のため、マングースやノネコに襲われることがあるのだ。
写真は貴重な昼間の営巣姿。環境省の仕事の一環で、無人カメラを設置して撮影したものだ。雨の日も晴れの日も母鳥は卵を抱き、くちばしで卵の位置を丁寧に変えて均等に温めていた。細やかな愛情に頭が下がる光景だ。
だが彼らの習性には自然の厳しさを物語る一面もある。1回に2~4個の卵を産むが、孵化のタイミングがずれた場合、母親は先に孵った雛鳥を連れてすぐに巣を離れてしまう。
奄美で観察したこの巣でも、母親は3つあった卵のうち、1つを残して立ち去った。雛鳥がすぐに歩けるのも、種を守るという目的のためなのだろうか。
※ノネコ 野生化した猫のこと。餌を人からもらう野良猫と区別される。ノネコが希少動物を捕食するため問題になっている
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然の
いのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。写真集の購入はホームページまで。
http://www.shinyaimaizumi.com/
いつでも元気 2024.6 No.391
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