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いつでも元気

いつでも元気

青の森 緑の海

2024年1月 鹿児島県徳之島にて

 また、徳之島の森に入っている。土地に馴染んでくると、見えるものが広がり、次第に見えないものまで見えてくる。例えば、過去の時間などがそうだ。
 鳥類の撮影でよく入る「カムィヤキの森」には、カムィヤキという陶器を焼いた約1000年前の窯元や、当時の有力者の城跡があり、国指定の史跡となっている。
 森にはまた、人工的な溝が縦横無尽に走っている。旧日本軍が掘った塹壕だ。写真のように深さ1mほどで、人ひとりがかろうじて移動できる幅しかなく、大勢の兵士や住民が詰めると、攻めこまれた時の逃げ場はないと思われる。
 戦争からわずか80年後の昨年11月、島で自衛隊の「離島奪還訓練」が行われた。地元3町では以前から自衛隊を誘致している。
 沖縄で米軍を見慣れている僕の目からも、この時の島の様相は“異様”だった。戦車が主砲をむき出しにして走り、山にはアンテナを展開した部隊、岬には対空ミサイルが何基も据えられた。森で撮影していると、顔に迷彩ペイントを施した兵士が、目と鼻の先を通り過ぎていった。
 校庭で遊ぶ子どもたちのすぐそばで、自動小銃を構えた兵士が草地に潜み、銃口を光らせている。自衛隊の本質を見た気がした。
 夜、島のコンビニは買い物をする迷彩服であふれていた。冗談を言いながら、おにぎりやパンを慎ましく買う。彼らは普通の若者の顔に戻って軍用車に乗り込み、宿舎に帰っていった。


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然の
いのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。写真集の購入はホームページまで。
http://www.shinyaimaizumi.com/

いつでも元気 2024.4 No.389