ハーフタイム
増田剛(全日本民医連会長)
政治を変える1年に
あけましておめでとうございます。今回は新年の抱負として、「いい加減、この国の政治を変えませんか?」というお話です。題材は、埼玉県議会で起こった恥ずべき“あの話”です。
2023年10月、埼玉県議会の福祉保健医療委員会で可決された「埼玉県虐待禁止条例」改正案。自民党議員団が提案し、公明党の賛成で一時は条例案が成立しそうになりました。マスコミでも報道されたので、知っている方も多いかもしれません。
この条例案、9歳以下の子どもをゴミ出しや回覧板を回す間だけでも自宅に残したり、子どもだけの公園遊びや集団登下校を“虐待”として禁止する内容です。
懸命に仕事をしながら子育てに苦労する父母の事情などお構いなし。育児や日本のジェンダーギャップの実態を理解しない議員の発案ですが、こんな議案が危うく成立しそうになったことに驚きと憤りと情けなさを感じます。
「もう第2子は生まない」「埼玉県から引っ越す」など、千件を超える苦情が県に届きました。多くの市民が県庁に抗議に押し寄せ、慌てた自民党は、本会議を前に議案を撤回しました。市民の力が悪法を止めたのです。
ケアの視点で政治を変革する必要性を痛感するとともに、こうした価値観を持つ議員が選出される現実に強い危機感を覚えます。
4月の埼玉県議会議員選挙の投票率は34・92%で過去最低を更新、しかも全国最低でした。4カ月後の埼玉県知事選挙(8月)の投票率も過去最低の23・76%で、こちらも全国最低。ちなみに、埼玉県議93人中、自民党は58人(女性3人)で、そのうち18人(31%)が無投票当選です。
ネット上では「選挙に行かないとこうなる」と揶揄される始末。埼玉県民として本当に情けない。
今回の顛末から学び、年頭の誓いを立てましょう。
一つ、主権者として選挙に臨む姿勢を改めましょう。「選挙行っても変わらない」じゃなくて、「行かないと大変なことになるよ」です。ついでに一人区や小選挙区制の問題点を明らかにして、選挙制度の見直しについても発信しましょう。
もう一つ、理不尽を許さない市民のアクションこそが悪政を変える原動力だ、ということを確認しましょう。今回の最大の教訓です。この間の「同性婚」裁判や、水俣病訴訟などにも学び「次は自分が立ち上がる」という決意を固め合いましょう。
行動すれば変えられる、このことを確信できる2024年にしようではありませんか。
いつでも元気 2024.1 No.386