ハーフタイム
増田剛(全日本民医連会長)
ノーサイドの精神
第10回ラグビーワールドカップ(フランス大会)は南アフリカの優勝で幕を閉じました。日本代表は10月8日のアルゼンチン戦に敗れ、惜しくも決勝ラウンド進出を逃しましたが、大健闘だったと思います。
大会の全48試合をビデオで早送りしながら夢中で楽しみました。フィジカルの進歩とランキング下位国の善戦に驚き、「やっぱりラグビーはいいな」と感じました。
私がラグビーを始めたのは偶然です。高校に入学したばかりのある日、学校のトイレで、たまたま隣に立った大男(自分の1・5倍はあった)に半ば強引に誘われたのがきっかけ。そのままラグビー部の説明会に参加したことが、人生の転換点となりました。
以後、高校、大学とラグビーを続け、医師になってからも汗を流しました。三度の骨折(足の指、下腿、頬骨)のほか、肉離れや脳震盪、数えきれないほどの捻挫など、結構痛い目にもあいましたが、ラグビーの虜になってしまった人生です。辛いことばかりが多いものの魅力的な経験を共有する“ラガーマン”は、初対面でも既に他人とは思えません。
ラグビーの特質を示す象徴的な言葉に、試合終了を意味する「No side」があります。文字通り「サイド」、つまりは敵味方が無くなることです。おそらく他のスポーツには無い特異な表現だと思います。試合中は闘志が高揚して大乱闘になっても、終了後はハグをしてお互いの健闘をたたえ合う。今回のワールドカップでも毎試合後、目にした光景です。
こうした雰囲気は観客席も同じ。皆さんもテレビで観て不思議に思ったかもしれませんが、ラグビーの国際試合は両チームのファンがエリアを分けず入り交じって応援します。そして試合終了後は声を掛け合い「たたえ合う」のです。これが何とも清々しい。
もう一つ、ラグビーを象徴する言葉に「One for All All for One」(一人は全員のために、全員は一つの目標のために)があります。これは他のスポーツでも、社会人としても、もちろん医療従事者にも大切な理念ですね。
ラグビーワールドカップはオリンピック、サッカーワールドカップと並ぶ世界3大スポーツ大会といわれるビッグイベント。ビールの消費量はサッカーの6倍とか。
今回のフランス大会で活躍した世界のトッププレーヤーのうち、多くの選手が実は日本のチームに所属しています。23チームが参加する国内リーグ(リーグワン)は12月9日に開幕。会場に足を運び、人と人が全力でぶつかりあう“音”、そして選手が発する“熱(気)”を感じてみてください。
いつでも元気 2023.12 No.385
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