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いつでも元気

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青の森 緑の海

2023年8月、熊本県天草市

2023年8月、熊本県天草市

 息子と夏休みに熊本県天草市へ行った。天草市の沖合に定住するミナミハンドウイルカに会うためだ。
 天草はかつて、沖縄の漁師が「サバニ」という木造帆掛け船で旅した地のひとつで、日本と南西諸島、台湾などをつなぐ「海上の道」の途中にある。
 イルカは通詞島から島原にかけて広く生息している。通詞島の名称は「多くの言葉に通ずる人々」が語源とされ、この地域の人々が沖縄はもちろん、遠くはアジアの国々まで漁を通じて交流していたことを物語る。海は本当に“道”なのだ。
 船で港を出ると、さっそくイルカに会うことができた。というより、堤防からイルカの姿が見えていた。そのくらい人間の生活と近い。
 サメが少なく餌の魚が豊富な海であること、イルカ漁が行われてこなかったことも、人間との距離が近い理由の一つと思われる。沖縄ではイルカ漁が盛んだったこともあり、岸近くで群れを見ることはない。
 魚を食べるイルカを漁師が敵視しないのは素晴らしい環境だ。そのおかげで、年間10万人の観光客がイルカに会いに訪れる。観光船が与える影響を軽減するため、「イルカウオッチング連絡会議」が自主ルールを定めたのは2000年のこと。
 それから20年、今日もイルカが船首の波に乗って遊ぶ。漁師は「イルカがいなくなれば魚もいなくなったということ。漁は終わりだね」とシンプルに語る。いつまでも、このままであってほしいと願う光景だった。


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然の
いのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。写真集の購入はホームページまで。
http://www.shinyaimaizumi.com/

いつでも元気 2023.12 No.385