青の森 緑の海
息子の誕生に合わせて引っ越してきた沖縄市は、以前は森だった面影を残しながらも、民家や店舗が建ち並ぶ立派な“街”だ。街を英語で書くと「ダウンタウン」だろうか。自然よりも人間の側に寄った土地という感覚がある。
住んでいるアパートの向かいに以前ゴルフ場だった草原があり、息子が小さいころよくそこで遊んだ。写真は、草原の松の木に営巣していたリュウキュウツミの若鳥。ツミはハヤブサに近いハトほどの小型のタカで、昆虫や小鳥から、ヒヨドリ・ハトなど自分と同じ大きさの鳥まで仕留める優秀なハンターだ。
草原には小さなネズミやバッタ、小鳥までさまざまな生きものがおり、親鳥は捕えてきては若鳥に与えていた。ある調査では、繁殖期にペアが必要とする小鳥の数は350羽と推定されている。猛禽類は意外と街にも適応しており、全国の観察例ではビル街での営巣も確認されている。ハトやヒヨドリなどが都市部にもたくさんいるためだ。
ただ、都市化の弊害もある。PCBやダイオキシンなど人間生活から出る汚染物質は、人間を含む高次捕食者の体内に濃縮される。鳥たちの大切な卵の中にも、親鳥から移行した汚染物質が高濃度で含まれてしまう。
鳥が生きていく未来に、僕たちは責任がある。街で見かける鳥の暮らしに関心を持ち、子どもたちに伝える。そのことが始めの一歩だと思う。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然の
いのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。写真集の購入はホームページまで。
http://www.shinyaimaizumi.com/
いつでも元気 2023.11 No.384