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いつでも元気

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ハーフタイム

増田剛(全日本民医連会長)

改めて「社会保障」とは

 社会保障は世代を超えた全ての人々が連帯し、困難を分かち合い、未来の社会に向けて協力し合うためにある」─。
 これは昨年12月に発表された政府の「全世代型社会保障構築会議」報告書にある文章。すっと胸に入ってくる方もいるでしょう。「困難を分かち合い」「協力し合う」ことを否定するつもりはありませんが、果たしてこれが社会保障なのでしょうか?
 「自助」「共助」「公助」、これもよく聞く言葉ですね。本来災害の現場で使われていた言葉が、福祉の分野に登場したのが1990年代。2012年から続く自公政権では、社会保障の原則のように扱われ、「自己責任論」蔓延の要因になりました。
 日本の社会保障制度の出発点となった政府の社会保障制度審議会「社会保障制度に関する勧告」(1950年)の要旨を紹介します。
 「社会保障制度とは困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ、すべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすること」。このように責任は国家にあることを明確にしたうえで、憲法25条について「国民には生存権があり、国家には生活保障の義務があるという意である」と明示しています。

 「日本人はあれだけ社会保障を犠牲にした代わりに、いったい何を得たのですか?」―。
 2017年にパリで開催されたシンポジウムに参加した際、現地の人からこんな問いかけを受けました。社会保障を奪われた代わりに“よほど良いものを手に入れたのでしょうね”という質問で、相次ぐ社会保障改悪に忍従する日本人への痛烈な皮肉でした。
 フランスでは、国民の“たたかい”で社会保障を勝ち取ってきました。最近でも「黄色いベスト運動」など、日本とは比べ物にならない規模で労働者のデモが起きます。恐らく「公助=国が助ける」という言葉も、フランス人には滑稽に聴こえるでしょう。
 冒頭の「報告書」に話を戻すと、最近は社会保障の権利性が歪められ、国の責任が曖昧にされる事態が進行しています。
 物価高騰の影響で実質賃金は上がらず、国民の生活は困窮しています。さらに大軍拡は間違いなく社会保障の削減に直結します。将来世代に「人権としての社会保障」を手渡すために、社会保障本来の理念を思い起こすこと。主権者としてその権利を守るために“たたかい”に立ち上がること。次の総選挙では、社会保障を大きな争点にしなければなりません。

いつでも元気 2023.10 No.383