けんこう教室 新型コロナ 何が変わる?
5月8日から新型コロナの感染症法※上の位置づけが「2類相当」から「5類」に引き下げられました。
何がどう変わるのでしょう。
読者の疑問に全日本民医連の根岸京田副会長が答えます。
※ 感染症法…正式名は感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
Q:そもそも「2類相当」「5類」とは何ですか?
A:感染症法は、疾病を感染力の強さや発症した時の重篤さに応じて1~5類に分けています(資料1)。
1類は生命の危険が高いエボラ出血熱やペスト、2類は重症化リスクと感染力の高い結核やSARS、3類は主に食品を介して集団発生するコレラや腸チフス、4類は主に動物を介して人に感染する黄熱や鳥インフルエンザ、5類は国が発生動向を調査して蔓延を防止すべきものとして季節性インフルエンザなどが該当します。それぞれに対して、国や自治体が実施できる規制や措置の内容が決められています。
新型コロナの感染拡大が始まった2020年2月、国はこれを感染症法の「指定感染症」として「2類」と同等の措置をとってきました。同年3月に「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(特措法)を改正して、新型コロナに適用を拡大。この特措法に基づいて、緊急事態宣言や外出自粛要請が行われたことは、記憶に新しいところです。
2021年2月、感染症法の改正によって、新型コロナは「指定感染症」から「新型インフルエンザ等感染症」に変更され、引き続き「2類相当」の位置づけで対策が行われてきました。
Q:5類への移行で何が変わりますか?
A:入院勧告や外出の自粛要請、就業制限などができなくなります。また、保健所による感染者の全数把握や濃厚接触者の調査(積極的疫学調査)なども行われません(資料2)。今後は事前に指定した定点医療機関の報告によって、感染動向を把握します。
従来、新型コロナの診療は診療・検査医療機関に限られ、入院は感染制御が可能な設備のある指定医療機関に限られていました。5類への移行後は、制度上はインフルエンザと同等の扱いのため「インフルエンザに対応している医療機関ならどこでも受診可能」となります。
しかし、コロナ患者を診るためには、一般の診療と時間や空間を分けなければならず、すぐに対応できる医療機関ばかりではありません。スタッフなど体制上の問題もあります。事前にインターネットで調べたり、電話で相談してから受診することになると思います。
Q:受診時の医療費はどうなりますか?
A:従来はコロナ陽性確定後の医療費は、全額公費で負担していました。5類移行後はさまざまな経過措置があるものの、通常の保険診療として自己負担が発生します。
・検査の自己負担
PCRなど検査の公費支援は、5類への移行で終了しました。ただし高齢者施設などで陽性者が出た場合の集中的検査は、これまで通り行政検査(公費)として実施されます。
抗原検査キットは、自費で購入すると1回分が約1500~2500円です。厚労省のホームページには、抗原検査キットを取り扱う薬局のリストが掲載されています。
・医療費の窓口負担
5類移行後は医療費の窓口負担が発生します。ただし高額なコロナ治療薬の費用は、夏の感染拡大も想定して9月末まで引き続き公費で負担されます。その後は他の疾病との公平性を考慮しながら検討することになっています。仮に公費負担がなくなれば、例えば治療薬のラゲブリオの自己負担額は最大で3万2470円になります。
Q:宿泊療養や入院についてはどうですか?
A:宿泊療養(隔離目的のホテル)は原則として廃止されます。妊婦支援型や高齢者の医療機能強化型の宿泊療養施設は継続される予定ですが、自己負担が発生します。
病床については、5類への移行で入院の際に加算されていた特例措置や病床確保に関する補助金が段階的に縮小されます。コロナ患者の専用病床は減少すると考えられます。保健所が行っていた入院調整機能は、徐々に医療機関同士で行う仕組みに移行します。
Q:療養期間について教えてください。
A:5類移行に伴い、法に基づく外出の自粛要請や就業制限はできなくなります。各勤務先や学校などの基準に従うことになります。
厚労省は4月、5類移行後の感染者の療養の目安を発表しました(資料3)。それによると、発症翌日から5日間の外出の自粛を推奨。5日目に症状が続く場合は、軽快から24時間程度まで延長するとしています。
また、従来の濃厚接触者という概念はなくなりました。同居家族が感染した場合、発症翌日から5日間は特に自身の体調に注意し、7日目までは発症の可能性があるためマスク着用などの配慮を求めています。
Q:生活上の注意点はありますか?
A:厚労省は、個人の感染予防策である「新しい生活様式」(20年5月)を今年3月に改訂し、「新しい健康習慣」として発表しました。基本的な考え方は「地域での感染症の流行状況に関心を持ち、自らを感染症から防ぐこと」です。
具体策として「体調に不安や症状がある場合は、無理せず自宅で療養するか医療機関を受診する」「その場に応じたマスク着用や、せきエチケットを行う」「換気に配慮しつつ3密(密閉・密集・密接)を回避する」「手洗いの励行」「適度な運動と食事」の5つを挙げています(資料4)。従来の「人との間隔は2m空ける」という目安はなくなりました。
・マスク着用について
マスクをつけるかどうかは、地域の感染状況や周囲の混雑の状況、空間の広さ、その場にいる時間、目の前にいる人の重症化リスクなどを考慮して個人で判断することになります。共同組織の班会や各種集会でのマスク着用については、それぞれの法人の感染対策委員会に相談して決めるのが良いでしょう。
Q:心配なことや今後の課題はありますか?
A:感染症法上の取り扱いが5類となったところで、ウイルスそのものが変わるわけではありません。感染しやすいことは間違いなく、変異株が出現する可能性や、感染状況が正確に把握できなくなるのは心配です。
検査や受診の公費負担がなくなったことで受診控えが起こることや、感染後に長引く後遺症も懸念されます。
コロナ禍の経験を踏まえて、どんな感染症にも対応できるように、保健所や医療体制を充実していく必要があります。今後のまちづくりの課題も見すえながら、一緒に明るく健康に過ごしていきましょう。
いつでも元気 2023.6 No.379