まちのチカラ 栃木県壬生町 いちご王国とおもちゃのまち
文・写真 橋爪明日香(フォトライター)
栃木県の中南部に位置する壬生町。
壬生藩の城下町、また日光西街道の宿場町として栄え、近年は「おもちゃのまち」としても有名です。
わくわくがあふれる町の魅力を探しに行きました。
※感染対策をしたうえで取材しています
東京から車で約1時間半、北関東自動車道の壬生インターチェンジを下りると、関東平野北部の壬生町に到着しました。海抜50~100mの平坦な地形にあり、町を流れる3つの河川が肥沃な大地を作ります。
町には珍しい町名として「おもちゃのまち」1丁目~5丁目が存在します。1960年代に玩具工場が相次いで誘致され、工業団地が造られました。やがて東武宇都宮線「おもちゃのまち駅」が造られたこともあり、1977年に正式な地名として生まれました。
大きな工場が建ち並ぶ中に、人々に親しまれるスポットとしておもちゃのまちバンダイミュージアムが建っています。玩具を主とした博物館で、館内は「日本のおもちゃ」「西欧を中心としたアンティークトイ」「エジソンの発明品」「ホビー(ガンダム)」の4つのテーマで構成されています。
高さ約5・6mの原寸大ガンダムの胸像や歴代のキャラクターロボットが、訪れたファミリーを迎えてくれます。数々の貴重なおもちゃを眺めていると、発明やものづくりの素晴らしさに、童心にかえって感動してしまいます。
いちごの新・女王
栃木県が収穫量全国1位を誇るいちごは、壬生町でも特産品として生産されています。いちごの主力品種としては「とちおとめ」が知られていますが、たゆまぬ努力と研究が生んだ深紅の高級いちご「ロイヤルクイーン」があると聞き、町南部の観光農園ストロベリーガーデンロイヤルを訪ねました。
「全体に赤みを帯びて熟すので、中まで真っ赤なんです。このまま食べていただくのはもちろんのこと、ケーキ屋さんや加工場にも喜ばれていますよ」と、甘い香り漂う園内を案内してくれたのは観光農園の従業員さん。広いハウスの中は高設栽培で地面も整地されており、車いすやベビーカーでも安心していちご狩りを楽しめます。
さっそく赤く輝く果肉をかじると、ジュワーとたっぷりの果汁が口の中にあふれてきて、香りとともに甘さが広がります。まさに“いちごの新・女王”にふさわしい高貴な大粒。これは町を訪れたら、ぜひとも思い出の1ページにしていただきたい体験です。
なお、現在いちご狩り体験は問い合わせが殺到するほどの人気。予約するなら、平日の木曜日が狙い目です。
200年前のお殿様料理
町は江戸時代、壬生藩の城下町として栄えました。壬生城は徳川将軍家の宿館としての重要な役目があり、日光東照社(のちの日光東照宮)の造営をきっかけに、三代にわたり将軍が宿城しました。まさに将軍家の「おもてなしの城」、北関東の要衝です。
壬生藩の四代目藩主・鳥居忠燾が食べていた「御献立帳」を、現代風にアレンジした「壬生お殿様料理」が町内数カ所の飲食店で提供されていると聞き、割烹 山水亭を訪れました。
大きな大名椀でお殿様料理を出してくれたのは、山水亭の店主・石山信一さん。「メニューを考案するにあたり当時の資料を見ると、基本的に食材のほとんどが野菜で、大根やごぼう、川魚など当時の農家が食べていたのと同じ物がそのまま載っています。地域のことをすごく考えていたお殿様だったんだなということがうかがえます」と石山さん。ナマズの天ぷらや鮎の万年煮など、一口食べるごとに心が華やぐ豪華絢爛な品々です。
町の名産であるかんぴょうが入った汁に、稲妻に見立てたきざみのりをのせて食べるかみなり汁は、町で昔から親しまれているふるさとの味。200年の時空を越えて、壬生藩鳥居家の世界と食を体験してください。
てくてく歴史散歩
最後に、町の歴史に深く関わる史跡を巡るコースをご紹介します。町中心部の東武宇都宮線壬生駅を中心に、9つの神社仏閣、3つの古墳、2つの公園があり、歩いて回ることができます。このコースは新日本歩く道紀行「文化の道」に認定されています。
観光ガイドを片手にまず向かったのは、壬生駅から徒歩15分の精忠神社。壬生藩鳥居家の先祖・鳥居元忠公を祀る神社で、境内には元忠公が伏見城(京都市)で自刃した際に血を流した畳を埋めたとされる「畳塚」があります。
さらに5分歩いて到着した壬生寺は、樹齢400?500年の大イチョウが見事。他にも、東雲公園や牛塚古墳など、てくてく歩きで歴史散歩が楽しめます。
この他、広大な敷地内に「壬生町おもちゃ博物館」や「とちぎわんぱく公園」「みぶハイウェーパーク」など見どころが点在する道の駅みぶ(壬生町国谷)など、子どもから大人まで遊べるスポットが詰まった壬生町。ぜひ、あなたならではのわくわくを探してみてください。
■次回は広島県安芸太田町です。
まちのデータ
人口
3万8535人(2月末現在)
おすすめの特産品
いちご、かんぴょう、蜂蜜、地酒
アクセス
東京駅から壬生町役場まで車または電車で約1時間半
問い合わせ先
壬生町観光協会
0282-81-1844
いつでも元気 2023.5 No.378