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いつでも元気

いつでも元気

青の森 緑の海

2023年1月 沖縄県北谷町にて

2023年1月 沖縄県北谷町にて

 クジラの話は2021年5月号でも掲載した。僕が彼らにこだわるのは、生きものとして魅力的なことに加えて、さまざまな理由がある。
 はるか北の海から旅をしてくる動物だということ。食物連鎖の頂点にあり巨大であること。それによって環境変化の影響を受けやすいことなどだ。
 これらは人間にも共通する。
 例えばコロナは「旅」を通じて広がった。一方で、旅には文化や種族を混ぜ合わせ、刺激を与え、発展させる役割もある。そうして人類は生息地を拡げてきた。しかし拡がりすぎて、自然界にもともとある疫病との接点も増えた。
 生きものはそれぞれに、保たれるべき領域があるということなのだろう。食物連鎖の観点でも、プラスチック汚染の影響を最も受けるのはクジラであり、人間だ。
 写真は沖縄島に漂着したザトウクジラ。1~2年前に生まれた若い個体だと思われる。もしや僕が水中で一緒に泳いだ子どもかもと思うと、せめて自然のサイクルのなかで命を落としたと願わずにはいられない。
 クジラは一度陸に上がりながら、また海へと戻った存在だ。彼らの生き方と現状には、僕たちがこれから先も、この星で生き抜いていくうえでの重要なヒントが秘められているような気がする。
 漂着したクジラは死後1週間ほど経っていたため死因は分からず、3日後に町内の陸地に埋葬された。


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。

いつでも元気 2023.4 No.377