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いつでも元気

いつでも元気

ハーフタイム

増田剛(全日本民医連会長)

“withコロナ”というけれど…

 新型コロナに対峙して、はや3年となりました。今年の正月は約15万人が海外旅行に行くなど、世間の様子は随分変化したと感じます。年末年始、街は大賑わいで、満員の飲み屋には楽しそうな声があふれていました。まるでコロナは終わったかのよう。ついにかつての平穏が戻り、幸せを謳歌できる日が来た…?
 でもその時、医療機関や介護施設では、かつてない困難が発生していました。今年の仕事始めの日、私が院長を務める埼玉協同病院の発熱外来には朝から長蛇の列。100人以上が検査を受け、約7割がコロナの陽性でした。感染症病床は常に定員オーバーで一般病棟にも感染者があふれ、連日綱渡りで一般医療を維持しました。
 介護施設で感染者が発生すると、もはや医療機関への入院は不可能なケースがほとんど。十分な医療設備の無い介護施設に、感染者が「留め置き」されることが常態化しました。
 連携する開業医が点滴や酸素吸入を可能な限り行い、どうしようもなくなったら保健所に連絡せよ。その際はDNAR(心肺蘇生を行わない)承諾の有無など情報を整えておくこと、との通知が発せられた県もあります。
 救急医療はほぼ壊滅的打撃を受け、消防庁の報告によれば救急搬送困難事案はコロナ流行前の4~5倍に膨れ上がっています。死者数は1日で500人を上回る日もあり、1月の死者数は初めて1万人を超えました。異常事態です。
 市井の様子と感染症に対峙する現場との悲しいほどの乖離を、どのように受け止めればよいのか、医療・介護従事者の苦悩は深まるばかりです。経済はもちろん大事。でも、人のいのちが蔑ろにされることは、どのような理由があっても受け入れることはできません。
 大変残念なことに、こうした事態に対して、時の首相や担当大臣からケア労働者の胸に響くメッセージは皆無でした。
 あろうことか第8波が吹き荒れた昨年末、政府はろくな議論もせずに軍事費の大幅アップを決めました。原発の新たな建設など、これまでの方針の大転換も。多くのマスコミ報道はそちらに流れ、医療・介護現場の窮状は置き去りにされた感があります。
 本格的な「withコロナ」の時代になっても、「ゼロコロナ」を求められる医療・介護事業所が感染対策を緩めることはありません。現場のケア労働者の心が折れることのないよう、為政者の姿勢を正すことが重要です。

救急搬送困難事案 医療機関への受け入れ照会回数4回以上、かつ現場滞在時間30分以上

いつでも元気 2023.3 No.376