青の森 緑の海
新年がやってきた。今年もさまざまな困難が待ち受けているだろう。だが1年のはじめは、穏やかで明るい写真でスタートしたい。
南の島々の浜辺を彩るこの花は、グンバイヒルガオ。戦国武将が陣頭指揮に使った「軍配」に葉の形が似ていることから、この名がついた。
グンバイヒルガオは四国から南の海岸線に咲く。仕事でお花畑の映像を撮ろうとして、「どこにでもある」という思い込みが間違いであることに気づかされた。
沖縄島内で探しても見当たらず、あったとしても範囲が狭かったり、生命力が弱っていたりで、自然度の高い海岸線がいつのまにか減っていたことを肌で感じた。
原因の一つは、沖縄島の多くの海岸にリゾートホテルが建っていること。島の大きさに対して、ホテルの数が多すぎる。
そしてもう一つは、外来種モクマオウの繁殖だ。小さな松ぼっくりのような実を山のようにつける高木で、今ではほぼ沖縄全域に広がる。
紹介した写真は、那覇市からフェリーで2時間かかる島、座間味島にある阿真の浜の風景だ。
ここは住民によって景観が守られている。景観は観ているだけでは守れない。朝は散歩し、昼は魚をとり、夕は涼む。そんな“生活の道”として、ここを使っていることが重要なのだ。
改めて沖縄の海岸線を見ると、海を生活の一部とする人たちが以前より減ったことが破壊の始まりなのかもしれないと思う。自然はそこを日常的に必要とする人たちがいてはじめて、保たれていく側面がある。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。
いつでも元気 2023.1 No.374
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