青の森 緑の海
夕暮れの青い時間、船が静かに停泊する風情ある風景…。しかし、船団の目的は「海を埋めること」。そう、辺野古の米軍新基地建設現場で使う埋め立て用の土砂を運ぶための船だ。
ダンプで土砂を運んでいた政府に対し、基地建設に抗議する人々は車の移動を遅らせる方法をとった。ダンプの前に立ったり、ゲートの前に横になり車が動くのを遮るのだ。すぐに警察官や機動隊、警備員に担がれて“排除”されるが、その間、埋め立てを遅らせることができる。
一方、土砂を運ぶ運転手にとって仕事は「運んでナンボ」。邪魔されるのは即収入に関わる。それでも多くの運転手は長い車列のなか辛抱強く、抗議の人々が排除されるのを待っている。同じ沖縄の人々が、体を張って座り込みしてしているのを日々見ているからだ。政府のもとで沖縄の人同士が対立させられている。辺野古は、この国の差別構造の縮図といえる。
埋め立ての遅れに対し政府は、陸路に加えて海路による運搬を始めた。主に西海岸の本部半島にあるセメント会社から東海岸にある辺野古まで、わざわざ南北に細長い島の北端を回り、船で運ぶルートを作ったのだ。
沖縄の山を削って海を埋めるだけでなく、九州や奄美、瀬戸内海など県外各所から土砂を持って来る計画もある。あまりにも罪深いことではないだろうか。
名護市辺野古のゲート前座り込みが3000日を迎えた9月、74歳の義母が永眠した。戦争に加担しない志を貫いた人で、最近まで抗議行動に参加し、沖縄知事選では病床で玉城デニー候補の応援に心血を注いでいた。平和を願うバトンは受け継いでいかなくてはならない。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。
いつでも元気 2022.12 No.373