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いつでも元気

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ハーフタイム

増田剛(全日本民医連会長)

東京2020の“レガシー”って?

 新型コロナ第7波の大波の中で、この原稿を書いています。連日病院入り口には朝から発熱外来の長蛇の列。猛暑で診察待ちの最中に具合が悪化する方もおられ、現場はてんてこ舞いです。そんな時にテレビから「東京五輪から1年」との報道が。そういえば1年前はこのことで大もめだったな、と当時を思い出しました。
 第5波の真っ只中に大会は強行されました。現場では病床が逼迫し、感染しても入院できず在宅で死亡する人が多発。救急車を依頼しても受け入れられず、結局自宅に戻るケースも。そんな時に多くの医療資源がオリンピック・パラリンピックに投入されました。
 今年6月21日に発表された組織委員会の報告書では、期間中(2021年7月1日~9月8日)に大会関係者だけで100万回を超えるPCR検査が行われました。この数は同時期の都内の検査数を上回ります。
 最も驚いたのは「東京2020大会が残したレガシー」という項の以下のくだりです。
 「大会を間近に控えた時期に起きた組織委員会幹部や関係者の人権に関する言動は、組織委員会がジェンダー平等や多様性と調和の重要さを再認識する契機となっただけでなく、日本社会全体の議論を活発化させることになった」―。
 目を疑いました。美談にでもするつもりでしょうか? 森元首相の女性蔑視発言が無ければ、人権の大切さを再認識できなかったのですか? 元首相は辞めたとはいえ、組織委員会は当事者です。「社会全体の議論を…」など、まるで自画自賛。それは他者が評価するところですよ。
 ほかにも、招致時の幹部の献金疑惑や酷暑での大会強行に選手から批判の声が上がったこと。「原発はアンダーコントロール」という大嘘で世界を欺き、“復興五輪”と銘打ったがいまだに多くの国民が故郷を奪われたままであることなど、大事な総括はありません。
 朝日新聞は6月24日の社説で「あるべき総括に程遠い」「お粗末で身勝手な内容」と厳しく断じました。当初の予定から倍増した費用問題や、終わって1年経って新たに発覚した不正疑惑など、本当のレガシーについての検討はこれからです。
 元来スポーツ大好きの私。大奮闘した選手たちの心情を思うと、私の気持ちも穏やかではいられません。心の底から楽しめる、アスリートファーストのオリンピック・パラリンピックが実現するよう、関係諸氏の真摯な検討を切に望むところです。

選手、大会関係者の検査数は101万4170件、同時期の都内検査数は93万5937件

いつでも元気 2022.10 No.371