青の森 緑の海
このところ、大浦湾(沖縄県名護市)のマングローブ林によく入っている。広大な森ではないが、自然の奥深さや凄みを感じさせてくれる場所だ。
ただ、ひとつ頭の痛いことがある。それは自動小銃の音。ちょうど森の向こう側が米軍基地になっていて、朝から夕方まで戦闘訓練の音が絶えないのだ。
水中撮影をしていても音は耳に届く。間近で聴く自動小銃の音は映画とは違い、「パラパラ、パラパラ」と乾いている。自然を撮影しながらも、心臓がずっと絞られているような感じがする。
大浦湾周辺の海に潜るようになって30年が経った。今も変わらずに感じていることは、「何ごとも中に入って見てみないと分からない」ということだ。
森も海も、外から見ているだけでは本質をとらえることはできない。海ならば実際に水に浸かってみる。森ならば林道からではなく、土を踏みしめて樹々の懐へと歩み寄ってみる。たぶんそれは、人間社会にも当てはまるような気がする。
写真は瀬嵩集落の友人、西平伸さんと2人で、大浦湾中央部のパラオハマサンゴ群落に潜った時のもの。指をつく隙間もないサンゴの森は圧巻だ。
地上の森から流れ出す水は豊富な栄養分を含み、この海のサンゴや魚たちを支えている。マングローブの森と、この海底の森がどこか似ていると思うのは、その繋がりを感じるからかもしれない。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。
いつでも元気 2022.9 No.370