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いつでも元気

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まちのチカラ 
裏磐梯に広がる神秘の湖沼

文・写真 牧野佳奈子(フォトライター)

五色沼湖沼群のなかでもひときわ鮮やかに輝く弁天沼

 福島県の北西部に位置する農業と観光の村、北塩原村。
 会津富士とも呼ばれ、日本百名山の一つ磐梯山の北側(裏磐梯)にあります。
 裏磐梯高原には、大小300以上の神秘的な湖沼群が点在。
 季節ごとに表情を変える自然美を訪ねました。

感染対策をしたうえで取材しています

 JR郡山駅から車で約1時間、標高800mの裏磐梯高原は、福島、山形、新潟の三県にまたがる磐梯朝日国立公園に含まれる観光リゾート地です。あちこちにペンションや日帰り温泉、キャンプ場などが点在し、大自然を堪能できるよう整備されています。
 その景観の源は、約5万年前と1888年(明治21年)の過去2回にわたって大規模な噴火を起こした磐梯山。猪苗代湖が位置する山の南側(表磐梯)は約5万年前の岩なだれによってでき、北側の裏磐梯が明治期の噴火で形成されました。

表情豊かに輝く五色沼

 まずは最も有名な五色沼湖沼群のトレッキングからスタート! 「毘沙門沼」や「青沼」など約10の湖沼を巡る片道4kmのトレッキングコースです。坂道が少ないので小さな子どもでも歩きやすく、家族連れから年配者まで気軽に自然散策を楽しめます。
 それぞれの沼は湖底の成分が違うため、時間帯や天気によっても微妙に色合いが変わります。特に鮮やかな「弁天沼」は、沖縄の海を思い起こさせるエメラルドグリーン。風に揺れる広葉樹の隙間からキラキラと輝く湖面を眺めながら歩くと、90分のトレッキングはあっという間に終わってしまいます。
 出口に近づいた頃、マスクを外して大きく深呼吸してみました。サワサワという木の葉の音とともに、大地の精が体内をスーッと通り抜けた気がしました。

キャンプ場で桧原湖を堪能

 五色沼湖沼群の西側には、裏磐梯で最大の桧原湖がたたずんでいます。湖岸にはレジャーボートや遊覧船に加え、釣り船も多数。夏はバス釣り、冬は氷上ワカサギ釣りの聖地なのです。
 一方、家族連れに人気なのはキャンプ。中でも珍しい「ボートで行くキャンプ場」があると聞いて訪ねました。
 湖岸までボートで迎えにきてくれたのは、松原キャンプ場の松﨑諭さん。キャンプ場は、車で行くことができない桧原湖の南湖畔にあります。裏磐梯が国立公園に指定される前から三世代にわたってキャンプ場を経営。今では妻の直子さんと2人の息子さんの家族4人で、年間2000人以上の利用客を受け入れています。「この辺りは戦後アメリカの進駐軍が発見し、『ワンダフル!』と言って避暑地にしたそうですよ」と諭さん。
 コロナの影響でキャンプ場の団体客は減りましたが、逆にアウトドアブームによって個人客が急増したとのこと。直子さんは「カヌー体験のような活動的な遊びを楽しむ家族連れも多いですが、逆に何もしないでのんびり過ごしたいという個人のお客様も増えました。コロナ禍でストレスが溜まっている人が多いのかもしれません」と言います。
 桧原湖から雄大な磐梯山を眺めていたら、日常のストレスなど瑣末でちっぽけだと思えてくるかもしれません。

山塩で体内から健康に

 裏磐梯高原を西側に下った麓には、かつて製塩が盛んだった集落があります。北塩原村という村名の通り、この辺りは平安時代から温泉水を使って製塩。江戸時代に入ると年間400トンもの山塩を生産し、税として会津藩に納めていました。
 その歴史を受け継ぐのが会津山塩企業組合。2007年に村おこしの一環で設立され、現在は年間4・3トンの山塩を生産しています。ただし、製塩の技術は江戸後期の専売制度で途絶えてしまったため、「ゼロからのスタートだった」と理事長の栗城光宏さん。「江戸時代には各戸に塩釜があり、まさに集落をあげて塩作りに励んでいたようです。今は当時と違い、源泉を塩にも温泉にも使えるので、ある意味いい時代ですね」。
 塩釜を見せてもらうと、ボイラー室のような熱気が立ち込める室内に9つの釜が並んでいました。塩の風味を損ねないように燃料はすべてまきを使い、徐々に塩分濃度を上げながら約1週間かけて商品に仕上げています。海水に比べカルシウムの割合が高いため、まろやかな味の塩ができるとのこと。
 完成した山塩を使った逸品が山塩ラーメンで、村内各地で味わうことができます。どの店も同じ山塩を使っていますが、店によってだしが違うため食べ比べするのも良さそう。ミネラルを含んだ会津山塩のスープが、胃の隅々まで浸透します。

パワースポットで二つ児参り

 最後にお勧めしたいのが村の西端にある北山漆薬師堂です。平安時代に安置された会津五薬師の一つで、「参道の霊石に腹を当てると一生腹病みしない」との伝説が。
 御堂を管理する松音寺の住職、林賢光さんが案内してくれました。「会津藩主の蒲生秀行が病弱な息子を霊石に触れさせたところ、病が治ったという伝説です。それほど強いパワースポットだということですね」。
 その霊石は御堂正面の石段の途中にありました。毎年9月7?9日に開催される二つ児参りでは、2歳になった我が子の腹を霊石に触れさせようと多くの人が参拝に訪れます。
 険しい山道の先にひっそりとたたずんでいる北山漆薬師堂は、厳粛な空気に包まれています。子連れでなくとも、その御利益を得に訪れてみてください。

■次回は京都府伊根町です。

まちのデータ

人口
2520人(6月1日現在)
おすすめの特産品
会津山塩、ジュンサイ、高原野菜
高原蕎麦
アクセス
東京駅から郡山駅経由で猪苗代駅まで電車で約2時間、猪苗代駅から桧原湖まで車で約30分
問い合わせ先
裏磐梯観光協会 0241-32-2349

いつでも元気 2022.8 No.369