青の森 緑の海
常々、感じていることがある。見上げる空は、そのまま宇宙であるということ。僕たちが地球という丸い星の表面に住んでいる、ということだ。
30数年前、沖縄に初めて来た時、まだちっぽけだった空港の外に出ると、どこか南の果物のような匂いがした。足元には驚くほど大きなコウモリの亡骸が落ちていて、見上げた空には雲が怖いほど間近をぐんぐんと流れていた。その時、地球と自分がダイレクトにつながっている、という感覚を強烈に覚えた。
それからずっと、この琉球の地にいる。本来暑さが苦手で雪山の大好きな自分が、なぜここに根を下ろしているのかと思う。その理由の一つに、南の島ならではのこの「つながっている感覚」があるのかもしれない。
沖縄では街にいても海からの湿った大気が皮膚に届き、スッと染み込んでくる。寒冷地では身体が身構えるけれど、この島の風土ではその必要がないから、いつも風土と身体が直接つながっている安心感があるのだろうか。
この島々の自然は僕にとって、新鮮な風景というより、逆に懐かしいものとして目に映る。掲載の写真は真夏の慶良間諸島。“慶良間ブルー”と呼ばれる青い海をモノクロームの眼で視ると、風景はこの島が確かに地球の一部、宇宙の一部であることを感じさせてくれる。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。
いつでも元気 2022.8 No.369
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