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いつでも元気

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けんこう教室 
受けよう がん検診

 みなさんはがん検診を受けていますか?
 2009年にがんと診断された約29万人の10年間を追跡調査した国立がん研究センターの奥山絢子さんが、分析結果から見えてきた教訓を話します。

国立がん研究センター 院内がん登録分析室 室長 奥山 絢子

国立がん研究センター
院内がん登録分析室 室長
奥山 絢子

 国立がん研究センターは昨年12月、がんの「10年相対生存率」を公表しました。これは2009年に全国281病院で、がんと診断された約29万人の10年間を追跡調査したものです。
 全国の病院が診療科を問わず、がん患者さんの情報を登録した「院内がん登録」というデータを用いて分析しました。患者さんの総数と10年という期間は、これまでにない大規模な調査となりました。
 がんの種類ごとの10年相対生存率を資料1に示しました。全体の10年相対生存率は60・2%(平均年齢66・8歳)。がんと診断されても、多くの方が生存していることが分かります。医療技術の進歩とともに、以前に比べてがんと共生する時代になってきたと言えるでしょう。
 調査結果の詳細は、がん情報サービス公式サイトの「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」からご覧いただけます。がんの種類や進行度、年齢や手術の有無などの条件を設定して検索すれば、生存率が分かるようになっています。

進行度別に見ると

 次にがんの種類や進行度別の詳細を見てみます。
 進行度は早期から順にI期~IV期があり、がんの広がりの程度を示すものです。一般にがんが進行した状態で見つかった場合、再発するリスクが高いと考えられます。
 例えばIV期では、がんが発生した部位から遠く離れた場所にもがんが転移(遠隔転移)していることが多くあります。この場合、手術で全てのがんを取り除くことは難しく、化学療法などが治療の中心になります。
 資料2をご覧ください。大腸がんと乳がんでは、進行度I期もしくはII期での10年相対生存率は80~90%を超えています。
 早い段階でがんを見つけることができれば、生存率は高いことが裏付けられました。科学的根拠があるとされる検診でがんを早期に発見することで、がんによる死亡を減らせると考えられています。
 大腸がんの場合、5年経過後はどの進行度でも相対生存率がほぼ横ばいになっています。それと比較して、乳がんは5年以降も相対生存率の下降が見られ、長期的なフォローアップが重要であることが分かります。

厚労省が推奨する5つの検診

 がん検診は自覚症状がない時点で行うので、がんが進行していない状態でも発見することができます。これは検診の大きなメリットです。
 一方、検診で「がんの疑いがある」と言われて精密検査を受けても、がんが発見されないことがあります(偽陽性)。精密検査後に本当にがんと診断されるのは、胃がんの場合は1・5%と言われています。また、検診で発見されたがんの中には、進行がんにならずに消失したり、そのままの状態にとどまって生命を脅かすことはないものもあります。
 厚労省は科学的根拠に基づき、効果があるがん検診として特に5つを推奨しています(資料3)。ほとんどの市区町村では、がん検診の費用の多くを公費で負担しており、一部の自己負担で受診できます(資料4)。

コロナ禍で受診控え

 2020年は新型コロナウイルス感染症が世界的に流行しました。この年の「院内がん登録」の登録数は、前年(19年)から5・9%減少。特に初めて緊急事態宣言が出された5月には、大きく下がりました。がん検診による発見だけでなく、自覚症状で受診して発見された例も減少しています。コロナ禍における受診控えの影響がうかがえます。
 コロナ禍の初期はウイルスについて分からないことも多く、誰もが不安を感じていたのではないかと思います。しかし現在は、各医療機関においてウイルスの特徴を踏まえた感染対策がとられています。
 ご自身の生命を守るために、適切なタイミングでがん検診を受けてください。不調や自覚症状がある場合には、早めに医療機関を受診しましょう。

相対生存率とは、がん以外の原因による死亡の影響を取り除いた生存率

いつでも元気 2022.6 No.367