青の森 緑の海
この写真は、前号で美しい風景を見せてくれた西表島のもうひとつの顔だ。「東洋のガラパゴス」とも呼ばれる大自然の島には、海外からの漂着ゴミという大きな課題がある。
ネイチャーガイドの草分け、森本孝房さんと森や海辺を歩いた。森本さんが、島の自然に惚れこんで移り住んだのは21歳のころ。以来、建設の仕事や農業をやりながら、40年以上も島の自然を見続けてきた。
蛇のようにうねるモダマのツルや希少な植物などを撮影したあと、海岸で出会ったのがこの光景だ。「世界遺産」という文字と、ゴミが散乱する目の前の景色がしばらく噛み合わず、めまいがした。
森本さんに話を聞くと、そこにはグローバルとローカルな問題が絡み合い解決を難しくするという、多くの事象に共通の課題が見えてくる。
環境問題を解決する手段の一つにゴミ拾いがあるが、ゴミ袋1つにつき1000円の処理料がかかると言われたらどうだろう。プラスチックのゴミには、海を漂流している間に汚染物質が吸着される。このため「産業廃棄物」として隣の石垣島に船で運び、埋め立て処分するしかない。
問題を訴えても、町役場がある石垣島から西表島へは行政の職員も議員もなかなか来てくれない。「世界遺産だからこそ、世界の人に直接見てもらうしかない」と森本さんはつぶやいた。
タイトルの「島の課題は…」。後に続く言葉は何だろう。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。
いつでも元気 2022.5 No.366
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